*この記事はゴム・プラスチックの技術専門季刊誌「ポリマーTECH」に掲載されました。
シリーズ連載① ポリマーの接着と分析講座
No.1 接着と粘着の違いを学ぶ
ジャパン・リサーチ・ラボ代表 奥村治樹
はじめに
今回接着と分析をテーマとして、表面や界面の話題について連載を行っていくことになった。特に材料開発者としてのこれまでの経験をベースに書き進めて行く予定である。
「接着」、「分析」という言葉については、モノづくりに携わる人でこの言葉を耳にしたことが無い、関わったことが無いという人は現代においてはほぼいないと言っても過言ではない。もちろん、開発等だけではなく身の周り、生活の中でという意味も含めてである。
人類と接着との関わりは極めて長い。古くはニカワやアスファルトなどを用いた接着があり、その関係は数千年に及んでいる。それほど人類にとって接着とは無くてはならないものであると言える。特に現代社会において接着はほぼすべての領域において必須の根幹技術の一つである。
たとえば、図1に示すのは接着が用いられている代表的な分野や用途などを示したものである。現代では、テレビなどに代表される家電製品に回路基板が当然のように用いられている。その回路基板は多層構造になっており、その複数層構成を実現しているのはもちろん接着技術である。また、工業材料、工業製品には必須の技術であり、最近では医療用の接着剤といったものも開発されて使用されている。また、自動車や飛行機からスペースシャトルのような宇宙産業においても接着の活用範囲は拡大する一方である。
接着というとどうしても、二つの対象物をいわゆる接着剤で付けることをイメージするが、対象物自体にすでに接着技術が使われている場合が多い。最も代表的なものは図1にも挙げているコーティングや塗料である。これらは、基材に対してコーティング剤や塗料を塗るわけであるが、技術的には接着と分類することができる。すなわち、たまたま付けたいものと付けるものが同じだったというだけである。
このように考えると、前述のように身の周りのほぼあらゆるものに接着技術が関わって
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