住友ベークライトは8月28日、植物の主要成分である「リグニン」を活用した固形ノボラック型フェノール樹脂を開発し、課題であった製造技術を確立して量産機での生産を実証したと発表した。主力の自動車分野をはじめ、今後各種分野に熱硬化性の環境対応プラスチックとして提供する。
液状レゾール型のリグニン変性樹脂については古くから研究がなされており、近年、欧州を中心に木材接着剤等への適用が進んでいる。同社ではこれら液状レゾール型樹脂に加えて、製造プロセス面で難易度が高い固形ノボラック型のリグニン変性樹脂を開発し量産技術を確立した。
基盤研究の知見をもとに実用化検討を重ね、既存の石油由来フェノール樹脂と遜色ない加工性、樹脂材料特性、コストの並立が可能となった。バイオマス比率も用途によっては50%以上の樹脂設計が可能。今回ノボラック型リグニン変性フェノール樹脂を開発したことにより、同社主要用途の自動車分野をはじめ、広範なフェノール樹脂材料分野での利用が可能となった。想定される用途としては、石油由来フェノール樹脂と同様に、用途に合わせた樹脂特性に調整可能。石油由来樹脂同等の優れた強度・耐熱性に加え、リグニン由来の機能が得られている。
同社は今後、非可食性バイオマス等の植物資源の活用に対する市場の多様なニーズに応えるべく、環境対応への需要が一層高まっている自動車や航空機関連部材をはじめ、様々な産業分野で用いられているフェノール樹脂材料への適用・実績化を目指し、国内外の各種産業分野への利用展開を図っていく。また、コスト競争力のある再生可能な原料である非可食性バイオマスを利用したフェノール樹脂製品の製造プロセスを実現し、二酸化炭素の排出量削減により、持続可能な低炭素社会を実現する産業基盤の構築とSDGsの実現に寄与していくとしている。
なお、同開発品を含む新規材料は、10月19日~11月18日に開催される「ケミカルマテリアルJapan2020―ONLINE―」に展示予定。