日本触媒は10月1日、リチウムイオン電池用の新規電解質「イオネル~リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)」の増大する需要に対し、既存設備の年間生産能力300tでは不足するため、独自プロセスによる新規製造設備の建設(年間生産能力2000t、立地場所「日触テクノファインケミカル」)に向けて2020年10月1日付で「イオネル建設チーム」を設置し、設備設計に入ることを決定したと発表した。
新規製造設備の商業生産は2023年春を目途に開始する予定で、2024年には100億円超の売上高を目指す。なお、LiFSI市場は世界的に拡大することが想定され、2025年以降の需要に対応するため、同社では欧州での新規設備投資計画も検討している。
LiFSIは高純度化が困難な物質であり、その生産や品質管理には高度なノウハウが必要とされるが、同社はこれまで培ってきた独自の生産技術力を活かし、年間2000tを安定生産する技術を確立した。また、イオネルは同社特許により保護された高純度LiFSIであり、品質面・価格面・知財面で、安心して使用できる製品といえる。
近年、環境問題への意識の高まりから、省エネ・低公害の次世代自動車の代表的存在である電気自動車(EV)に対する期待は高く、EV市場は着実に拡大している。イオネルをEV向けリチウムイオン電池の電解質に使用することで、低温から高温まで広い温度範囲で、電池のサイクル特性、レート特性、保存安定性の向上に著しい効果を発揮することから、電解質の添加剤用に限らず主剤として採用され、イオネルの需要がアジアを中心に拡大している。さらにイオネルは、全固体電池などの次世代革新電池の電解質としても性能向上に効果を発揮することから、需要のさらなる拡大が期待されている。