当会は本年7月20日に創立70周年を迎えました。70年前の1950年は経済統制がようやく解除された年であり、「将来の自由経済に処する恒久的中央団体」の趣意により当会が設立されました。
ゴム工業も日本経済の発展とともに成長を遂げてまいりましたが、幾多の苦難があり、その道は決して平たんなものではありませんでした。しかし、現代のあらゆるシーンで日常を支えるゴム製品に思いを致すと、その苦労は報われたと感慨深いものがあります。これは当会の活動に参加していただいている皆様と諸先輩方々のご尽力があったからにほかなりません。
当会は10周年ごとに記念式典を開催しているわけですが、この10年間にもいろいろな出来事がありました。2011年年初、前年のGDPが中国に抜かれ世界3位となったことが判明したショックも冷めやらぬ中、3月には東日本大震災が発生し人的、物的を問わず我が国に甚大な被害を及ぼしました。また、ここ数年では台風や豪雨などの自然災害が多発し、毎年のように尊い命が奪われています。
業界に目を転じてみますと、2007年の国内ゴム製品生産量は新ゴム量ベースで166万tと過去最高を記録しましたが、直近の2019年はグローバル生産の進展などもあり133万tと2割減の水準となっています。しかしながら、ゴムという特殊な素材はまだまだ工夫次第で伸びしろがあるのではないかと思っています。「ものづくり」という根をしっかりはりながら、価値観が多様で持続可能な社会に貢献し、100年に一度といわれる自動車の変革、CASEなどのトレンドを的確につかみ、さらに発展していく産業となるよう努力を重ねる必要があります。
一方、当会は2014年に一般社会法人へと移行し、大きな組織の変更を経て新たなスタートと切ったわけですが、現在はISOを中心とした標準化活動への取組、環境を中心とした持続可能性な社会への取組、労働力不足対策、働き方改革、安全衛生の問題解決などの課題に継続して取り組んでおります。今後も皆様のご意見を拝聴しながら、会員の皆様に喜んでいただける工業会でありたいと願っております。
最後にこの話題に触れないわけにはいきません。昨年末に新型コロナウイルスが中国・武漢で発生した後、世界を覆い尽くし、1年が経とうとする現在でも収束の兆しを見せず、経済活動は戦後最大の危機が続いています。今回はこのコロナ禍により、70周年記念行事を断念せざるを得なかったのは痛恨の極みでございまずが、ピンチはチャンスとも申します。テレワーク、会議のやり方、紙資料の廃止など、今までは当たり前と考えていたことが、実は不要や無駄なことであったと気付かされたことも多々ありました。また、こういう時こそ工業会が中心となり会員の情報交換を促進することで、ゴム産業がさらに強いモノづくりの事業となるべく取り組んでいきたいと存じます。
なお、来年5月の総会時には仕切り直しとして70周年記念行事を開催する予定でございます。その時には、皆様と笑顔でこの輝かしい歴史をともにお祝いできるよう祈念いたしております。先行きも全く見えない状況となっておりますが、歩みを止めることはできません。関係者の皆さまの一段のご支援、ご指導をよろしくお願いいたします。
2020年11月02日