宇部興産は12月2日、液晶テレビ向け回路基板やスマートフォン向け有機ELディスプレイ並びにハイブリッド車や電気自動車等の電装品市場拡大に対応するため、山口県宇部市にある宇部ケミカル工場内において、ポリイミド原料モノマー(BPDA(ビフェニルテトラカルボン酸二無水物))工場増設を決定したと発表した。稼働は2023年度下期の予定で、生産能力は現状の60%アップとなる。これにより同社は、昨年度に実施したポリイミドフィルム(商品名「ユーピレックス」)やポリイミドワニス(商品名「ユピア」)の設備再稼働・増産に加え、ポリイミド原料の外販市場への供給量拡大も図る。
ポリイミドフィルム・ワニスは、電子情報関連機器の回路基板材料などに使用されており、スマートフォン、パソコン、デジタル家電などの市場拡大や高機能化に伴い、今後も需要拡大が見込まれている。同社のポリイミドフィルムはLCD(液晶ディスプレイ)やOLED(有機EL)ディスプレイ分野向けを主体としたCOF(チップ・オン・フィルム)用途で、ポリイミドワニスはOLEDディスプレイ用途で、それぞれ高い市場シェアを獲得している。
また、FPC(フレキシブル・プリント回路板)用途においても販売量の増加が続いている。需要好調に伴い、昨年度には休止中であった大阪府堺市にある堺工場のポリイミドフィルム製造ラインを再稼働させるとともに、宇部ケミカル工場のポリイミドワニス工場の生産能力も増強した。また、これに伴いBPDA工場のデボトル増産工事も併せて実施しているが、今後更なる需要拡大が見込めることから、原料であるBPDAについても積極的な生産能力増強と安定供給体制の確保が必要であると判断した。
一連の生産能力増強により、同社は積極拡大事業であるポリイミド製品チェーンの事業基盤の強化・拡大を図っていくとしている。