【新年インタビュー】日本ゴム工業会 池田育嗣会長

2021年01月03日

ゴムタイムス社
池田育嗣会長

池田育嗣会長

■ 新年インタビュー

ピンチをチャンスに変える活動を

日本ゴム工業会 池田育嗣会長


 昨年設立70周年を迎えた日本ゴム工業会。「昨年はコロナ禍でやりたい活動ができなかったが、今年は秋にTC45の国際会議を日本で開催したい」と意気込む池田育嗣会長(住友ゴム工業会長)に昨年のゴム業界を振り返ってもらいつつ、今年の事業活動など聞いた。

 ◆昨年のゴム業界を振り返って。

 新型コロナウイルスの影響を大きく受け、本来やりたいことができなかった年だった。20年年初の予想ではタイヤ、ベルト、ホースの新ゴム消費量は若干下回るとみていた。一方、工業用品やその他のゴム製品は前年を上回ると予測し、トータルでは前年並みで推移するという期待感があった。
 ただ、2月以降のコロナ感染拡大に伴い、欧米各国が相次ぎロックダウンしたのに続いて、日本も緊急事態宣言が発出され、世界各国の経済活動自体が停滞した。特に、ゴム産業にとっては、自動車生産が4~5月に半減した影響が非常に大きかった。自動車にはタイヤを始め、防振ゴムやホース、ベルトなど様々なゴム製品が使われている。自動車生産が落ち込んだ影響を受けた。
 一方、新型コロナ発生源の中国は7月頃から経済状況が上向き、中国の自動車生産はプラス方向に転じている。中国の回復でゴム製品の生産も回復してきた感はある。ただ、足元の昨年11月のゴム製品生産を見ると、一昨年と同レベルには回復していない。昨年のゴム製品生産量(新ゴム量ベース)は前年比2割減の見通しとなったが、これは2009年のリーマンショック時のレベルであり、これをいかに元に戻すかが今後大切になるだろう。

 ◆コロナ禍での会員企業の現況は。

 会員企業の売上、利益ともに減少している。落ち込んだ売上・利益をいかに回復させるかが会員企業にとって大きな課題だ。また、新型コロナによる需要の急減を受けて生産調整を行った会員企業も多かったように思う。
 コロナ感染防止対策としては、営業所や工場では3密を回避すべく、時差出勤やテレワークを新たに導入した企業も増えた。ただ、感染防止に伴う移動制限があり、出張できないもどかしさが残ったのも事実だ。
 また、コスト面では物流費は依然上昇基調で推移している。国内ではドライバー不足や便数制限があったり、国際貨物では船便が縮小したり、制限を受けて製品を出荷できないケースもあった。様々な制限があるなかで事業活動をせざるを得なかった。
 ただ、その中でもゴム企業だからこそできた活動もあり、各社はピンチをチャンスに変える新たな活動に取り組んでいる。一例を挙げると、政府の要請によりゴム手袋を医療機関に供給したり、医療ガウンやマスクの開発・生産を行ったりするなど少しでもコロナ感染拡大を防ぐ取り組みもみられた。当工業会としてもこうした各企業の取り組みをまとめ、良いと思った活動は横展開していきたいと思う。

 ◆コロナ禍での工業会の活動について。

 20年はWEB中心の活動になり、講演会や委員会等の活動はWEBを主体に行った。本来は皆さまにお集まりいただきたいが、講演会は遠隔地の会員が参加しやすいといった面があり、WEBならではの良さも感じた。
 ただ、講演会とは違い、委員会や役員会活動は対面が中心になる。WEB中心になるとストレスもたまるので、基本的には対面で行いたい。緊急事態宣言解除後は、6月に総会や幹事会を、10月には理事会、幹事会をリアルで開催した。会員同士が顔を合わせ、情報共有を行える有意義な時間を過ごせたと思う。

◆環境規制に向けたゴム工業会の取り組みを。

 循環型社会の目標実現に向けて、当工業会は今まで「いかにエネルギー効率を良くするか、いかにゼロエミッションを達成・継続していくか」を主眼に活動を行ってきた。このことは今後も続けないといけない。
 その一方で、菅義偉首相が10月に所信表明演説で宣言した「2050年のカーボンニュートラル」は、我々のエネルギー効率を良くする取り組みとは次元が違う話になる。

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