■ 新年インタビュー
新商品開発のスピードを加速
クラレプラスチックス 中島多加志社長
クラレプラスチックスは、ゴム・化成品、フィルム・ラミネート、コンパウンドの3本柱で事業展開している。中島多加志社長に昨年を振り返ってもらいつつ、事業別の現況や新年の抱負を尋ねた。
◆昨年を振り返って
昨年は新製品開発を加速し、各市場で売上を拡大していく計画を掲げていた。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大により、生産活動が停滞したため、ゴム・化成品、フィルム・ラミネート、コンパウンドの各事業とも需要は落ち込んだ。20年12月期の業績は、販売数量減少に伴う生産コストの上昇などが響き、売上、利益ともに前年を下回る見通しとなっている。
◆事業別の現況は。
各事業とも厳しい状況にあるものの、コンパウンド事業は海外市場で比較的伸びている。特に一足先にコロナが収束した中国では、政府による騒音規制強化の追い風を背景に、振動減衰材「アーネストン」が業務用家電の材料向けで堅調だ。
ホース・ダクト類のゴム・化成品では、ここにきてスマートハウス向けのダクトホースが新型コロナウイルス感染拡大による停滞感を脱し、10月以降は回復の兆しを見せている。旺盛な需要に備えて、6月に伊吹工場(岐阜県不破郡垂井町)に同用途向けに1ラインを増設。今後もう1ラインを増やす計画もある。
フィルム・ラミネート事業はコロナ影響で建築着工が先送りされ、工事現場で使用されるシートなどの需要環境は厳しい状況が続くとみている。
◆中期経営計画の進捗状況について。
当初は今年から新しい中期経営計画をスタートさせる予定でいたが、コロナ禍という状況を考慮し、計画策定を1年先送りすることにした。今年は経済情勢などの様子を見て次期中期経営計画の中身を詰める年にする。長期的な視野に立って、従来の市場や顧客、商品などを含めて事業規模で見直したい。
◆攻めと守りについて。
2017年に社長に就任して以来、「攻めと守り」のバランスをとることに主眼を置いて事業を実行している。
攻めの部分では、いかに新商品の開発スピードを上げていくか。現中期経営計画ではコンパウンド事業で芽が出始めた商品もいくつかでてきた。次期中期経営計画でも開発を継続し、実績を出せる商品を見極めて注力していく。
守りの部分でも、積極的な守りの姿勢を示すことが大切だ。販売面では守るべき市場は守りつつも、新たな市場、新商品、エンドユーザーを発掘する。製造面では、生産効率向上と働きやすい職場環境づくりの一環として、系列別の生産量を見直し系列統廃合を進めることも検討している。
◆新年の抱負を。
コロナの収束時期は不透明だが、おそらく今年の後半あたりから各市場とも回復するのではないか。しかし、新型コロナウイルス感染拡大以前と同じ状況に戻るかは疑問だ。従来の延長線上の商品ではなく、今後伸びる市場、商品、エンドユーザーはどこあるのか、ターゲットを明確にして決める年にしたい。
■アングル■
クラレプラスチックスの社長に就いて4年目を迎えた中島社長。4年間で一番変わった点は事業改革の部分だという。品質管理・保証の面では3事業部ごとに違うやり方が存在していたが、現在は情報の一元化を進め、品質保証・管理では電子システムの整備と品質保証に関するルールを制定した。「これからもKP(クラレプラスチックス)の良い部分は残しつつ、改革すべき部分は改革する。変革のスピードを早めたい」(中島社長)と今後の展望を示す。