年頭所感 日本ゴム工業会 池田育嗣会長

2021年01月01日

ゴムタイムス社
池田育嗣会長

池田育嗣会長

 謹んで新年のご挨拶を申し上げます。

 2020年年初は景気の底入れの兆しがみられ、景気は緩やかに回復するという淡い期待がありましたが、2019年年末に中国・武漢で発生した新型コロナウィルスが瞬く間に世界を覆いつくし、今に至っても経済活動は戦後最大の危機が続いております。

 コロナ禍が深刻になるにしたがい、国内経済は大幅に悪化していきました。ゴム製品の最大の需要先である自動車生産も大幅な減産は避けられず、5、6月の国内ゴム製品生産はリーマンショック並みの落ち込みを経験いたしました。その後、中国、欧米を中心とした生産活動の再開や、中国経済の回復に伴う自動車生産急増に伴い、ゴム製品も徐々に上向きとなってきましたが、コロナ禍前の水準には程遠い状況となっており、欧米、そして我が国も感染の再拡大が懸念され、先行きの見通しが立たちません。

 しかし、当業界は生活を維持することに欠かせないエッセンシャルワークであることを肝に銘じて生産活動を維持し、自動車のタイヤやベルトをはじめ、多くの産業用部品の供給責任を果たして参りました。さらに、手袋、医療用ガウン、マスクの開発など、感染症の対策商品を上市あるいは寄付、高分子の加工・生産技術などを応用した製品の開発など、「ものづくり」の企業ならではの社会貢献もできたのではないか、と考えています。

 今後、こういった非常時に限らず、ゴム業界も持続可能で多様性と包摂性のある社会の実現に貢献するとともに、100年に一度と言われる自動車の変革、CASEのトレンドをしっかり捉えて対応していかなければなりません。
ゴム自体は、持続可能な社会の構築に欠かすことができない素材です。その特性や魅力を活かしていけば、需要先もまだまだ開けていくと思いますし、今後も「ものづくり」を基本にしたうえで、的確に未来を捉えた不断の努力を重ねることでさらなる発展が望めると確信しております。

 その中には、業界として取り組んでいくべきものも数多くあります。当会は、これまでも地球温暖化対策、廃棄物削減、化学物質対策などで自主行動計画を定め、目標の達成に向け、着実に進んで参りましたが、今後も継続して取り組んで参ります。さらに、2021年度以降の新目標を設定し、その目標を目指して歩んでいかなければなりません。そして、菅首相の「2050年カーボンニュートラル宣言」により、新たな対応が求められるでしょう。また、国際規格を含む製品や技術の標準化、安全面や品質管理の強化、持続可能性の追求などについても共通の課題として取り組んできましたが、こういった事業を継続することはもちろん、世の中の変化に対し工業会としてどのような事業を行えば会員の皆様のお役に立てるのかを念頭に置いて活動して参りたいと思います。

 ピンチはチャンスとも申します。コロナ禍が、テレワークやそれを通じた働き方改革、新たなコミュニケーションのあり方、会議の開催方法、紙資料の削減などの改善につながったこともまた事実です。将来、振り返ってみて、コロナ禍がさらなる発展の第一歩となった、というしたたかさを持ちたいものだと考えております。

 年頭に当たり、会員各位の一層のご発展を祈念いたしますとともに、関係各位の一層のご支援、ご協力をお願い申し上げ、挨拶と致します。

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