年頭所感 三菱ケミカルホールディングス 越智仁社長

2021年01月06日

ゴムタイムス社

 2020年は、前年から続く米中貿易戦争により世界経済が後退していた中、COVID―19によりリーマンショックを上回るダメージが生じた。中囻を筆頭に経済活動を再開させている囻も出てきているが、多くの囻々が感染第二波、第三波の襲来を受け、世界経済の本格的な回復にはほど遠い状況だ。世界経済を2019年並みの水準に回復するためには、ワクチンや治療薬の普及を待つほかないが、回復は2022年から2023年まで遅れるという見方も強くある。

 COVID―19の影響で最も変化が実感されたのは「働き方」だ。急速にテレワークの比率が高まり、製造やR&Dにおいても自動化やリモート化が進みだしている。コミュニケーションの在り方や仕事自体の在り方に本質的な変化が生じている以上、私たち一人ひとりが満足いく仕事をできているか、充実感を得るためにはどうしたらいいか、いっそう深く問われていると強く感じている。
 2016年から始めたKAITEKI健康経営は、個人の健康と働き方改革を車の両輪とする取り組みだが、COVID―19は健康経営の意義をあらためて際立たせた。変化を奇貨として、さらなる推進をしていく。
 三菱ケミカルでは4月から新人事制度が始まる。従来のいわゆる年功序列、終身雇用型の制度を、独自の「ジョブ型」制度に変革していく。ただし、欧米型の制度とは一線を画し、従業員の向上心と仕事への満足度を高めていくことを主眼としている。健康経営と相まって、一人ひとりの多様性を生かし、活力ある職場をつくりあげていくことを期待している。
 
 世界の環境問題や社会問題は深刻さを増し続けている。地球温暖化、食糧・水、社会保障の持続可能性、経済的格差、文化的断絶など、あらゆる難問が山積しており、早急な対処が求められている。一方で、デジタル、通信、バイオ、医療分野など、科学技術の急速な進化が、大きな変革を呼び起こしている。
 2050年に目指すべき社会の在り方からバックキャストし、2030年に当社があるべき姿を見定め、持続的成長を遂げていくため「KAITEKI Vision30」という中長期的な経営基本戦略を策定した。「KAITEKI Vision30」を基盤として、2021年度から始まる新たな中期経営計画を、2021年度から2022年度の2年間と、2023年度から2025年度の3年間とに分けて策定を進めている。COVID―19により短期間で広い範囲に激変が生じたため、最初の2年間はCOVID―19がもたらしたさまざまな事象に即応しつつ、集中的なダメージからの回復と経営基盤の強化、事業成長施策の実行に重点を置くことにしている。

 私たちを取り巻く環境は、常に先行き不透明なため、当社の企業理念「人、社会、そして地球の心地よさが続いていくことをめざし、Sustainability、Health、Comfortを価値基準として、グローバルにイノベーション力を結集し、ソリューションを提供していくこと」を達成するという強固な意思が、より重要になる。
 
 4月からジョンマーク・ギルソン新社長の下で、三菱ケミカルホールディングスグループがますます成長していくことを期待している。

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