2021年の新春を迎え、謹んで新年のお喜びを申し上げますとともに、年頭にあたりご挨拶申し上げます。
初めに、昨年を振り返りますと、何と申しましても新型コロナウイルスの感染拡大により世界中が混迷を極めた一年でありました。一時は減少していた感染者数もその後再び拡大するなど、収束の見通しについても予断を許さない状況にありますが、昨年末より、漸く一部の国でワクチン接種が始まりましたので、今後、我が国でも出来るだけ早く広く国民への接種が実現するとともに、感染拡大が着実に収束することによって、経済が本格的な回復軌道に乗って行くことを期待しております。
また、昨年、残念ながら延期となりました東京オリンピック・パラリンピックも、今夏、無事開催され、世界に向かって日本の元気な姿をお見せ出来ることを祈念しております。
私共、化学産業に携わる者にとりまして重要なテーマのひとつに地球温暖化対策がありますが、この度、菅政権が打ち出した2050年までのカーボンニュートラル達成に向けては、産学官さらにはオールジャパンによる長期継続的な取り組みが重要と認識しております。石油化学産業を含め化学産業は、これまでの自らの省エネの更なる実行とともにケミカルリサイクルや人工光合成等、化学の力を活かしたソリューションプロバイダーとして、今後も重要な役割を果たして行けるものと考えており、その実現に向けては国による積極的な政策支援を期待しております今般の世界経済を見ますと、新型コロナウイルス感染拡大の影響により戦後最大級の経済減速で憂慮すべき状況が続いております。また今後も、コロナ禍が継続する中で、ソーシャルディスタンスの確保への取り組み等により、需要面及び企業の生産性について、マイナスの影響が継続することが懸念されます。さらに、国際情勢は、米中関係の緊張状態の継続、不安定な原油価格動向の中での資源国の経済逼迫、中東における地政学的混迷等、多くの不確実要因を抱えております。
昨年11月の米国大統領選挙の結果を受けての今年の政権交代後の同国新政府体制により、自国第一主義から世界的協調路線へと世界経済の潮流が変わり、安定経済への軸足が戻ることを期待しております。
我が国としては、引き続き環境の変化に迅速かつ機敏に対応することが求められる年であり、新型コロナウイルス禍以降も見据えて、石油化学業界としても正面から内外の課題に引き続き取り組んで行くことが重要と考えております。
一方、国内の石油化学業界の状況を見ますと、エチレン設備の実質稼働率は、2013年12月以降、長期にわたり90%超えの高稼働を維持しております。
新型コロナウイルス禍の状況下においてもこのような高稼働が続いている要因は、①2014年から2016年までの3年間で、国内クラッカー3基が停止しており、既に体質改善が図られている、②汎用品は海外品にシフトが進んだが、国産品は高機能化し差別化が図られている、③自動車産業等主要ユーザーの回復や、マスク、衛生用品、防護服等の対コロナ関連製品や食品包装材への貢献がある、といった理由によるものです。コロナ禍により石油化学業界が人々の生活に必要不可欠なエッセンシャル産業と認識して頂いておりますが、このような高稼働が継続しているときこそ安定供給責任を果たすため、さらなる保安・安全の確保が重要となります。
このような状況下において、当協会としては我が国の石油化学産業の持続的発展に向け、以下の諸課題に積極的に取り組んでまいる所存です。
1、保安・安全の確保・向上
保安・安全の確保・向上は、最重要課題であり、事業を運営していく上で最も重要な基盤であることは言うまでもありません。この理念を踏まえ、保安・安全に対する以下の取り組みを行ってまいります。
(1)保安に関する経営層の強い関与
保安・安全の確保、向上のためには、経営層の強い関与が不可欠であります。
本年はトップの保安に関する懇談会等の内容をベースに「安全メッセージビデオ」の更新版製作に引き続き取り組みます。
(2)学習伝承
若手の現場管理者の気付きの機会とするため、保安推進会議、コンビナート地区での事故事例巡回セミナー等を開催し、保安に関する取り組み事例の共有化を図ります。また、同推進会議場を利用して会長として優秀な安全成績をあげた者へ保安表彰を行い動機付けの機会と致します。
さらに、「産業安全塾」についても、引き続き充実させ、人材育成にも努めてまいります。
(3)国、学会等との連携
官民一体となったスマート保安促進に向けた取組として国の会議や関係機関における検討に参画します。
また、高圧ガス設備、危険物施設等に対する地震・津波をはじめ風水害も含めた自然災害全般対策の委員会等に参画のうえ適宜提言し、会員会社へも情報共有や講演会開催等の啓発活動を行います。
さらに、安全工学会等への参画、高圧ガス保安協会他の諸団体との連携を深めます。
2、事業環境の基盤整備
我が国の石油化学産業が存在感をもち、持続的発展を遂げていくため、事業環境の基盤整備に取り組んでまいります。
(1)定修会議
定修日程の調整を円滑に進めるため、2019年12月にまとめられた「定期修理研究会報告書」に示されたガイドラインに基づき設置された「定修会議」の事務局としての取り組みを進めるとともに、定修問題解決のために同報告書で指摘されているコンビナート地域における共通課題などの解決に向け、経済産業省(以下「経産省」)とも連携して取り組んでまいります。
(2)規制改革要望
保安、環境、物流を始めとする競争力強化のための基盤整備につながる分野に重点を置きつつ、会員各社から政府に対する規制改革要望を幅広く吸い上げてその実現に努めることと致します。
(3)税制改正要望
税制改正要望については、国際的なイコールフッティングの実現、実質的な負担の軽減及び競争力強化のための基盤整備を目指し、経産省や一般社団法人日本経済団体連合会等の関係団体と連携し要望の実現に向けて努力致します。
また、原料ナフサ等に係る揮発油税及び石油石炭税の免税・還付措置の本則非課税については引き続き経産省と連携し、その実現に向けて慎重に対応して行きます。
(4)人材確保・育成
人材確保の活動としてこれまで実施してきた機電系エンジニアの採用支援のための大学での共同セミナーを、会員各社の協力を得つつ、今年度より導入したWEB開催の利点を活かし、引き続き実施してまいります。
また、人事担当者による情報交換会等を適宜開催してまいります。
3、グローバル化対応の強化
(1)アジア石油化学工業会議(APIC)
アジアの石油化学産業従事者のコミュニケーションの場として、毎年、アジア石油化学工業会議(APIC)が開催されておりますが、昨年開催予定でありましたAPIC2020・インド大会は、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて、本年5月に延期とされましたが、いまだ流行の収束が見通せないことから同会議加盟7協会で協議の結果、インド協会の主催によるAPIC2022として来年への再延期が決まりました。
具体的な新日程・開催地等は現時点では未定ですが、当協会もメンバー協会として、その成功に向けて引き続き協力を続けてまいります。
(2)海外情報研究会の開催
会員向けに同研究会を開催し、エネルギー、オレフィン、環境・RC、国際情勢、新規開発プロジェクト等広範かつタイムリーなトピックをテーマとして選定した上で、外部専門家講師と会員企業講師によるプレゼンテーションを実施しております。コロナ対策として導入したWEB形式の研究会には、従来比大幅増の方々に参加頂いており、本年も会員企業の知見の向上と情報の共有のために引き続き、その開催に努めてまいります。
以上、三点に絞って述べさせていただきましたが、ほかにも広報活動としては、石油化学産業の現状と課題について正確な理解を広く周知するために、政府、マスコミ及び教育関係者等に対しての理解支援活動を行います。具体的には毎年発行しているデータ集「石油化学工業の現状」について2021年版を作成・配布するほか、石化協ホームページ上で有益な情報の更新アップに努めます。
また、石油化学産業IT利活用の推進に努め、情報セキュリティ対策の強化を支援してまいります。
今後とも当協会への一層のご支援とご協力を賜りますようお願い申し上げます。
最後に、新型コロナウイルス感染拡大の早期の終息と日本経済の着実な回復・発展を願うとともに、関係各位の益々のご活躍とご健勝を祈念し、新年のご挨拶といたします。