導電性シリコンゴムを開発 日本ゼオン、QOL向上に寄与

2021年01月21日

ゴムタイムス社

 日本ゼオンは1月20日、単層カーボンナノチューブを用いてシリコンゴムの導電性を大幅に向上させるマスターバッチを開発したと発表した。このマスターバッチを用いたコンパウンドは、パーキンソン病や本態性振戦の症状を軽減する医療機器への応用を目指しており、米国Novation Solutions(以下、NovationSi社)と共同研究を進めている。

 同社が開発したシリコンマスターバッチは、人体に神経調節療法を実行する医療機器の部材として使用される。シリコンゴムに同社の単層カーボンナノチューブ「ZEONANO SG101」を練り込むことで導電性が付与されるが、シリコン分散液メーカーであるNovationSi社は更にこのマスターバッチを用い、「PURmix高濃度ゴム(HCR)ヘルスケアコンパウンド」を開発した。単層カーボンナノチューブをコンパウンドに効果的に分散させることにより、硬化物の導電特性が大幅に向上することが確認されている。

 パーキンソン病、本態性振戦はいずれも身体の震えを症状とする疾患で、悪化すると生活にも支障が出るケースがある。特に本態性振戦は症例が多く、40歳以上の4%が発症すると言われている。同疾患の抑制において、このシリコンゴムは米国FDAの認可をすでに取得しており、臨床試験では、多くの患者が震えの軽減を示したことが分かった。

 なお、開発されたマスターバッチは同社のグループ会社であるゼオンナノテクノロジーが販売するが、「ZEONANO SG101」を用いたHCRヘルスケアコンパウンドはNovationSi社が、「PURmix」ブランドで米国限定にて販売する予定となっている。

 同社はこの革新的技術により、神経疾患に苦しむ人々のQOL向上に寄与できるとしている。

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