*この記事はゴム・プラスチックの技術専門季刊誌「ポリマーTECH」に掲載されました。
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シリーズ連載② 現場に役立つゴムの試験機入門講座
第2回 加硫試験機 (Curemeter)─ その1
蓮見―RCT代表 蓮見正武
はじめに
1934年にDr. Melvin Mooneyによって作られたムーニー粘度計は加硫の初期の状況をスコーチタイムとして捉えることはできますが、それ以降の加硫の進行を捉えることはできません。
加硫の全体を捉えられる装置として加硫試験機が開発されてきました。いまではムーニー粘度計以上に重要な検査装置としてゴム会社には欠かせないものとなっています。本稿では加硫試験機の歴史と現代の密閉型ロータレスねじり振動式加硫試験機について解説します。
加硫試験機はJIS K6200「ゴム用語」、ISO 1382では「Curemeter」と呼びますが、レオメーター(Rheometer)という呼び方も一般的に使われているほか、日本国内ではJSRの商品名である「キュラストメーター」も加硫試験機の代名詞として使われています。
加硫試験機の歴史
加硫試験機の歴史は日本ゴム協会編「ゴム試験法(第3版)」に詳細に書かれています。
我が国における加硫試験機は実質的に1960年代に始まったといってもよいと思います。それ以前にはバルカメーター(1957独)、キュロメーター(1959英)などがありましたが、輸入品で高価であり、非密閉構造のためゴムの発泡や酸化などの問題もあって限られた台数だったと推察されます。
1962年にモンサント社はねじり振動方式のディスク式加硫試験機(オシレイティングディスクレオメーターODR)を開発し、これを参考に1964年に東洋精機製作所(以下東洋精機と略称)はTSS式レオメーター(図1)を開発しました。次いで1966年には日合商事株式会社(現JSRトレーディング株式会社 以下JSRと略称)からキュラストメーターⅡ型(図2、図3)が発表されました。
キュラストメーターⅡ型はトップハット型ダイを採用していますが完全密閉ではなく、わずかな隙間があるためにゴムが発泡すること、ダイスからはみ出した余分なゴム(オーバーフロー)を除去しないとトルク値に影響するという問題はありましたが、ローターレスである取り扱いの便利さとゴムの品質要求の高まりの時流に乗って広く普及しました。キュラストメーターⅡ型は現在もまだ多く使われています。
この時代はモータリゼーションの急激な発展により自動車工業が急拡大してタイヤをはじめとするゴム製品の需要も増大する一方でした(図4)。高速道路網が広がり、高速性能に優れるラジアルタイヤが普及し、ゴムの高品質化も必要でした。タイヤ会社をはじめゴム製造会社は練りゴムの品質を保証し、均一性を確保する必要から加硫試験機を積極的に取り入れました。
ゴムコンパウンドはカーボンブラック、無機充填剤、軟化剤、可塑剤、老化防止剤、加硫剤、加硫促進剤など十数種の原料の混合物です。これらが正しく配合され混合されていなければ所期の性能を発揮できないだけでなく、場合によっては致命的な不具合を起こします。混合されたコンパウンドが正しいものであるかは材料検査(バッチ検査)で確認しなければなりません。ほとんどのゴム練り工場では全バッチの検査が日常的に行われていますが、タイヤ会社のように一日の混合量が数百バッチにもなる工場では短時間に精度良く検査できる装置が必要でした。加硫試験機はこの目的に適っており、ゴム練を行う工場で加硫試験機は必須の試験機となりました。
TSS式レオメーター、キュラストメーターⅡ型はいずれもねじり回数6cpm、ねじり角±3゜で、いわゆる魚の骨チャートでしたが、東洋精機は100cpmのディスクレオメータODR 100型(図5)を、JSRは1980年に100cpmのキュラストメーターⅢ型(図6)を発表し試験精度は大幅に向上しました。
ODR 100型はJIS K6300-2 「ディスク加硫試験機」(ねじり振動式ディスク加硫試験機)として標準化されています。キュラストメーターⅢ型は完全密閉式のフラットダイ(平行板ダイ)を採用してⅡ型の欠点であった発泡の影響を解消し、その後のフラットダイ加硫試験機の基本となりました。フラットダイ加硫試験機はJIS K6300-2「ダイ加硫試験A法」(ねじり振動式平板ダイ加硫試験)に発展しました。
1990年代にはPC装備となりJSRキュラストメーターV型、W型、7型、東洋精機RLR-3型、RLR-4型、上島製作所FDRが開発されてフラットダイ型ローターレス加硫試験機は3社となりました。試験条件の設定や試験結果の解析はPCで行われ、試験の効率と精度が飛躍的に向上しました。試験結果は自動的にPCに保存されるのでペーパーレスとなり、データの検索再現が容易になり、インターネットを通じてリアルタイムで国内外とデータをやり取りできるようになりました。
一方、アルファテクノロジーズ(旧モンサントの試験機部門、以下α-techと略称)は上下ダイを円錐形状にしたバイコニカルダイ(bicornical die)を採用した密閉型ローターレス加硫試験機MDR(Mooving Die Rheometer)を開発しました。MDRは大手ゴム会社、合成ゴム会社が主なユーザーでしたが、近年は同じバイコニカルダイを採用した国産機種等により低価格化が進んでいます。バイコニカルダイ加硫試験機はK6300-2「ダイ加硫試験B-2法」(ねじり振動式円すいダイ加硫試験)として標準化されています。
フラットダイとバイコニカルダイ
近代的な加硫試験機は密閉型ローターレスねじり振動方式によって完成した感がありますが、ダイス形状は前述のフラットダイ(平行板)型(図7、図11)とバイコニカルダイ型(図8、図12)に分かれています。国内ではフラットダイ型が普及していますが、