*この記事はゴム・プラスチックの技術専門季刊誌「ポリマーTECH」に掲載されました。
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特集1 ゴム金型の最新動向と製造・技術の留意点
金型成形におけるゴムの流動と加硫挙動
―未加硫ゴムの特性から見た考察―
西澤技術研究所 西澤仁
1.はじめに
ゴム製品の成形加硫は、プレス成形加硫、射出成形加硫、押出連続加硫等によって行われており、押出連続加硫以外は製品形状に成形するために金型が使用されている。プラスチックスの成形加工と比較すると、ゴムは金型内で加硫が起こりゴム分子内の加硫(架橋)による優れた弾性と強度が付与される点が大きな相違である。
そのためゴム材料には加硫剤、加硫促進剤、加硫助剤が配合、混練、分散され、金型内での加熱圧縮成形時には架橋のための化学反応が起こる。金型内に充填されたコンパウンドは、加熱圧縮され、流動、加硫(架橋)と工程が進行する過程で物理的なゴム特有の流動、化学的架橋反応が進行して行くことになる。このようにゴムの金型成形加硫はかなり複雑な工程であり、しかもその挙動を理解することは大変重要なことになる。
今回は、プレス成形加硫、射出成形加硫において起こるゴムの複雑な挙動を考察し品質の優れたゴム成形品を作るポイントを探っていく。
2.ゴム金型成形において起こるゴムの流動と加硫反応
2.1 ゴムの流動特性の基本と特徴
(1)基本的な未加硫ゴムの流動挙動
未加硫ゴムの金型、射出成形機、押出機その他加工機械の中でのせん断速度、温度に対する流動特性は次式で示される1)2)。
粘度のせん断速度依存性(パワ-ロー方程式)η=τ/γn-1(1)
粘度の温度特性(パワーローとアーレニュースの組合わせ式)η=Aexp(B/T)γn-1(2)
η―――粘度 A,B――――材料特性値
τ―――応力 T――――絶対温度
γ―――せん断速度
n―――べき定数
これらの関係を図1に示す。未加硫ゴム材料の粘度のせん断速度依存性は、90~180℃、プラスチックスでは100~450℃の温度領域で求められるのが一般的である。ゴム、プラスチックスとも非ニュートン〈擬塑性〉流動を示すが、多くのプラスチックスは、低せん断領域ではニュートン流動に近い挙動を示し、粘度の温度特性は、パワーローとアーレニュースを組み合わせた式によって示すことができる。
ここで特徴的なことは、ゴムの粘度のせん断速度依存性がいずれの材料でもほぼ同じになることである。すなわち、せん断速度が103~104の高せん断領域でのnの値は、プラスチックスでは個々に異なるが、ゴムでは0.29~0.3の値を示し、ほぼ一定である。その理由は、ゴムは充填剤添加量が多く、しかも他の配合剤の添加量も多い複雑な組成を有しているため充填剤を主とした配合剤効果を示すことと、もうひとつのゴムは広い分子量分布型の粘度特性挙動を示