DICは1月25日、抗ウイルス・抗菌機能を有した3Dプリンタ向け熱可塑性プラスチック材料(以下、「フィラメント」)を開発したと発表した。抗ウイルス・抗菌性に作用するフィラメントの開発は国内初。同製品は、国際標準化機構(ISO)が規格する抗ウイルス性および抗菌性の国際標準に準じた試験において効果が確認されており、製品の表面に付着した特定のウイルスや菌の増殖を抑え、減少させることが可能となっている。
3Dプリンタ材料市場は、造形方法における技術革新の進展や材料の多様化・高機能化、造形品の試作品から最終製品へのさらなる適用拡大といった要因から大きく伸長している。世界市場の成長率は2018年から2023年まで年平均+21・2%で推移する見込みであり、2023年の市場規模は約4751億円になると予測されている(矢野総合研究所調べ)。
一方、新型コロナウイルスの感染拡大が続く状況下においては、消費者の衛生面への関心の高まりから医療施設や公共施設だけでなく日常生活のあらゆる場面においても、抗ウイルス・抗菌製品の使用を求める声が多くなっている。
今回、同社が開発した3Dプリンタ向けフィラメントは、抗ウイルス・抗菌機能を有した熱可塑性ポリウレタン樹脂(以下、「TPU樹脂」)を採用している。TPU樹脂は柔軟性や耐摩耗性を有することから、フェイスシールドやマスクなど医療や衛生用途での活用が期待できる。それ以外にもウイルス感染対策が求められ、かつ顧客のニーズに応じてカスタマイズが必要な造形品への展開が可能となる。今後は、電子・電気、スポーツ、日用品、住宅・建材、自動車など幅広い業界への展開を視野に入れ、2021年度中の販売を目指す。
同社グループは中期経営計画「DIC111」において、事業の質的転換と新事業の創出による事業ポートフォリオの転換を基本戦略に据えている。同社は3Dプリンタ用材料において、既に光造形用のコンパウンド材料を展開しており、熱可塑性プラスチック材料をラインナップに加えることで新たな事業の基盤化に向け邁進するとしている。