*この記事はゴム・プラスチックの技術専門季刊誌「ポリマーTECH」に掲載されました。
シリーズ連載① ポリマーの接着と分析講座
No.2 接着を生むメカニズム
ジャパン・リサーチ・ラボ代表 奥村治樹
はじめに
接着力が何によって生み出されているのか、これはメカニズム解明や不良解析を行う上では必要不可欠な情報である。その主な三つの基本力(機械的効果、分子間力、化学結合力)について、図1に示す。図より、様々な力が接着に関与していることがわかり、このことがまさに接着という現象を複雑なものにしている理由の一つである。
機械的効果
個々に見ていくと、機械的効果(アンカー効果、投錨効果)は面ファスナーのように絡み合いによって接着力を発現するパターンである。マクロとミクロの違いは、前者が肉眼や顕微鏡等で観察することができるようなサイズオーダーで、言うなれば物質レベルの絡み合いであるのに対して、後者は分子レベルの絡み合いによるものを指している。前者の場合には、通常は一方にあらかじめ凹凸が形成されており、そこに他方が入り込むことによって接着が行われる。これに対して、後者のミクロレベルの場合には、溶融や溶解等による分子レベルでの混合、絡み合いが主要因となっている。また、前者と後者の混合型もあることはもちろん、後述する分子間力や化学結合力との複合によってより強固な接着力を生み出すような工夫も行われている。
分子間力
次に分子間力については、静電気力(イオン間相互作用、水素結合)、双極子相互作用(永久双極子、ファンデルワールス力)、量子力学的相互作用(ロンドン分散力、パウリの排他原理)など様々ものが接着力の発生源として考えられている。それぞれの力について詳細な解説はここでは割愛するが、その力の強さなども考慮すると、これらの中でも特に水素結合力に代表される静電気力とファンデルワールス力が主なものとして議論されることが一般的である。これらの力は、接着の中でも前述の粘着に大きな関わりを持っている。その理由はすでに説明したとおり、作用の可逆性によるものである。
化学結合力
最後の化学結合力は、その名のとおり主に共有結合等の実際の結合形成によって発現する接着力である。たとえば、エポキシ接着剤やシランカップリング剤などはこのグループに属している。ここで挙げた様々な接着に関与する力の中でも、最も強いものであ
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