自動車を始め、一般産業用機械や精密機械、農業機械、OA機器などで動力や回転を伝達する役割を担う伝動ベルト。主な種類を挙げると、摩擦力を利用し力を伝える摩擦伝動ベルト、ベルトの歯とプーリの歯がしっかり噛み合って力を伝える噛み合い伝動ベルトがある。摩擦伝動ベルトにはVベルト、Vリブドベルト、平ベルトと呼ばれるベルトがある一方、噛み合い伝動ベルトには歯付き(タイミングベルト)ベルトと呼ばれるベルトがある。
日本ベルト工業会が発表した20年の伝動ベルトの合計生産量(新ゴム消費量)は9502tで前年比13%減。新型コロナウイルス感染拡大に伴う需要の落ち込みから1万t割れとなった。このうち、内需は8110tで同15%減、輸出は1392tで同3%減となっている。
内需では、自動車用は国内の自動車生産が大きく落ち込んだことや、ハイブリッド車(HV)などベルト非装着車の割合も増加傾向にある。このため、国内の自動車用は、新車に組み込まれるベルトの需要は伸び悩んでいる。また、一般産業用も、コロナ感染拡大により国内製造業の設備投資環境が冷え込んだ影響から内需は年間を通じ厳しい状況が続いた。
一方、輸出については、自動車用はコロナから一足早く回復した中国を始め、米国向けもここにきて需要の回復がみられ、自動車用の海外向けの受注環境は回復基調にある。
一般産業用についても中国向けで射出成型機や医療機器の需要が旺盛だ。「これら装置・機械に使われる伝動ベルトの販売も回復基調にある」(バンドー化学)としている。
一般産業用では5GやIotの成長を受け、半導体製造装置向けも堅調に推移する。一方、工作機械向けなどは依然厳しい環境が続く。業界や地域で需要回復はバラつきがあり、全般的な回復にはまだ至っていないのが実情のようだ。
営業戦略では、コロナ感染の再拡大で緊急事態宣言が再発出されるなか、対面による製品説明会の開催が難しい。ただ、各社は従来の対面営業でユーザーの声に耳を傾けながら、製品開発や設計提案を行うともに、WEBセミナーやWEB展示会への出展で新製品や注力製品の紹介にも力を注いでいる。
なお、日本ベルト工業会が発表した21年の伝動ベルトの需要予測は1万198tで同8・3%増を見込む。内需が8834tで同9・3%増、輸出が1365tで同2・3%増を予測する。内需・輸出ともプラス成長を見込むものの、コロナ前の19年実績(1万942t)の水準に届かないと見られている。
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