*この記事はゴム・プラスチックの技術専門季刊誌「ポリマーTECH」に掲載されました。
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特集1 ゴム用添加剤における製品への活用
硫黄系加硫剤の配合事例
三新化学工業㈱ 立畠達夫
1.はじめに
ゴム製品は、ベースとなるゴムに数種類から10数種類の配合剤が混合された複合体である。配合剤の種類も大まかに分けて、架橋反応・充てん補強・加工性向上・老化防止効果・機能性付与などが挙げられ、さらにそれぞれが細かく分類される。
ここでは、ゴムを工業製品として使用するために必須となる架橋反応の配合剤の中でも、さらに基本となる硫黄を中心とした配合事例について紹介する。なお、架橋反応の中でも硫黄を用いた場合を、専門用語で「加硫反応」と表現することが多い。本稿でも、以後は「加硫」および「加硫反応」と表記させていただく。
2.ゴムおよび加硫系配合剤の略号および試験条件
本稿において使用したゴムとその略号を表1に、使用した加硫系配合薬品とその略号を表2に、主な試験条件を表3にまとめた。
3.配合事例
加硫には、硫黄と加硫促進剤と酸化亜鉛の3つが必要である。このうち、硫黄の配合事例と一部加硫促進剤の配合事例を以降に紹介していく。
3.1 NR配合における硫黄の変量(1)
図1および表4は、NR配合において硫黄のみを変量した試験結果である。硫黄の添加量が増えるにしたがって、加硫の立ち上がりが早くなる。これは、いずれの温度でも共通した現象である。引張強度や引裂強度は、硫黄の添加量の増量とともに向上する傾向を示す。反面、耐熱老化性は悪化する傾向を示す。耐久性(屈曲亀裂成長)も、硫黄の増量とともに悪化する。
3.2 NR配合における硫黄の変量(2)
図2および表5は、NR配合において前述の(1)よりもさらに硫黄の添加量を増量した試験結果である。140℃×30分の測定では、硫黄を最大20部添加しても低硫黄の場合と同じような加硫曲線が得られているが、160℃×60分の測定では、硫黄の添加量が15部と20部の場合には加硫のピークが2段階となっている。これは推測になるが、約10分における最初のピークは加硫促進剤との反応によるもので、2番目のピークは加硫促進剤との反応で消費されなかった余剰分の硫黄によって反応が進行したことによるものと考えている。
3.3 NR低硫黄配合におけるCBSの変量
図3および表6は、NR配合において硫黄の配合量を0.5部に固定し、CBSを変量した試験結果である。低硫黄配合においてはCBSの変量による加硫の立ち上がりへの影響は少なく、ゴム強度のみが向上する。また、CBSの増量によって耐久性が低下し圧縮永久ひずみが向上する。
3.4 SBR配合における硫黄とCBSの変量
図4は、SBR配合において硫黄およびCBSの配合量を変量した試験結果である。硫黄とCBSのいずれを増量しても加硫反応は活性化するが、硫黄の場合は反応性の向上とともに加硫の立ち上がりが早くなるのに対し、CBSの場合は加硫の立ち上がりはほとんど変化せず反応性だけが向上する。必要とする物性にもよるが、硫黄とCBSの変量と加硫挙動への影響を活用して加硫調整をするとよいと思われる。
3.5 不溶性硫黄の配合
不溶性硫黄は、硫黄に加熱・冷却の処置を施し、二硫化酸素などで精製すると得られる硫黄の同素体である。不溶性硫黄は長鎖構造をしており、その名のとおりゴムに不溶性であることが特徴である。不溶性硫黄の使用に際しては、ゴムに溶解しないことからゴム練り時における分散性には注意を要するが、