*この記事はゴム・プラスチックの技術専門季刊誌「ポリマーTECH」に掲載されました。
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特集1 ゴム用添加剤における製品への活用
ゴム用老化防止剤
精工化学㈱ 八巻大輔
1.はじめに
ゴムは、自動車や工業機械向けの製品から日常生活用品まで様々な分野に使用されており、欠くことができない素材の一つである。様々な分野で使用されるために使用環境もまた製品によって様々であり、その環境の中で長期に渡ってゴムとしての機能(伸びや強度など)を維持することは非常に重要である。それを維持するための手法の一つとしては老化防止剤を添加することが挙げられ、添加することによって製品の長寿命化という目的を果たすことが可能になる。
ここではゴムの劣化機構から老化防止剤の選択、種類について紹介する。
2.劣化機構
図1に示すようにゴム製品は使用中に酸素、オゾン、熱、光、動的疲労など様々な要因により劣化する。
様々な劣化の要因が挙げられるが、主たる劣化の機構としては図2に示す連鎖反応による自動酸化である。
反応機構としては大きく3つに分かれ、開始反応、成長反応、停止反応である。
開始反応は様々な要因からゴム分子に発生するポリマーラジカル(R・)が起点となる反応である(式1-1)。
次に、発生したポリマーラジカルが系中に存在する酸素と結びつくこと(式1-2)でヒドロペルオキシド(ROOH)、ポリマーラジカルが生成される(式1-3)。ここで生成したポリマーラジカルは再び酸素と結びつき式(1-3)を繰り返す、一方のヒドロペルオキシドは様々なエネルギーを受けて式(1-4~6)のような反応が繰り返す、これら一連の動きが成長反応である。
停止反応は、成長反応で生成されるポリマーラジカルやオキシラジカル(RO・)がラジカル同士で結びつくことで起こる(式1-8~10)。
これらの反応を劣化として表現すると、連鎖停止によって再結合が増えると分子量は増加しゴムは硬化する方向に進むため硬化劣化となり、式(1-7)のような分子切断による成長反応が起こると分子量が低下しゴムは軟化する方向に進むため軟化劣化となる。
3.老化防止剤の選択
劣化には様々な要因があると前記したが、老化防止剤も種類があるため、どの要因に対して改善したいのかを考慮して選択することが重要である。また、劣化の要因だけではなく、老化防止剤を使うことによって起こる影響も考慮して選択する。それらの考慮すべき点を