*この記事はゴム・プラスチックの技術専門季刊誌「ポリマーTECH」に掲載されました。
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特集1 ゴム用添加剤における製品への活用
MLPC社のゴム薬品とその他主な輸入ゴム薬品
㈱加藤事務所 加藤進一
1.はじめに
株式会社加藤事務所ではフランスMLPC- INTERNATIONAL社のゴム薬品(ゴム加硫促進剤)の輸入販売をしている。ここでは同社のゴム薬品について解説するとともに、さらに日本に輸入されている、その他の主なゴム薬品について説明する。
2.MLPC-INTERNATIONAL社について
MLPC-INTERNATIONAL社はフランス最大手の化学品メーカーであるARKEMA社の100%子会社であり、創業は1926年で、1966年よりゴム加硫促進剤の製造を始めている。フランス南部、ボルドー市より車で1時間のところに本社とリオンデランデ工場(写真1)とラスゴー工場(写真2)がある。従業員数は220名で、この2工場でゴム加硫促進剤とそのマスターバッチを製造している。ISO9001、ISO14001、OHSAS18001を取得している。CSR活動では、EUの会社では今や標準となったECOVADIS社のCSR格付けでGOLD RATINGを得ている。村の中にある工場と森林に囲まれた工場で、排水処理装置があり、工場からの排水は回収され、その一部は処理後、付近の川に排出されている。原料は、主に貨車で工場の側線まで運ばれ、工場内のタンクに供給されている。EUではゴム加硫促進剤ではLANXESS社とMLPC社が2大メーカーとして有名で、この2社が加硫促進剤をEUのタイヤメーカー、工業用ゴムメーカーに供給している。同社の製品の60%はEU地域に出荷され、また北米、南米にはゴム加硫促進剤メーカーが存在しないため、同社の生産量の約25%を北米、南米に輸出している。日本を含むアジア向けの出荷は約15%である。全体の売り上げの約70%がゴム加硫促進剤(マスターバッチを含む)であり、残り30%はゴム用途以外の特殊化学品を製造販売しており、農薬、老化防止剤、潤滑油、接着剤に使用されている。
日本にも加藤事務所を通じて輸入販売されており、タイヤ向け、工業用ゴム部品向けにこれらのゴム加硫促進剤が使用されている。また一部は日本のゴム薬品メーカーにもOEMベースにて供給されている。
3.主なMLPC製品
3.1 加硫促進剤
MLPC社は「EKALAND」のブランド名にて各種ゴム加硫促進剤を製造している。
表1にその主な加硫促進剤を示す。
ジチオカーバミン酸塩系、チウラム系、グアニジン系、チオウリア系、モルフォリン系、その他グレードを生産している。主なグレード名ではTDEC、ZBEC、ZDBC、ZDEC、DPTT、TMTM、DPG、DOTG、ETC(CR用22)、DTDM、NITROSO HUである。品種によりオイル添加された粉体、グラニュール状、オイル添加されたグラニュール状等がある。主にタイヤメーカー、工業用ゴム部品メーカーに販売されている。
3.2 加硫促進剤マスバーバッチ
MLPC社はゴム薬品、ゴム加硫促進剤にユニークなバインダーを使用しマスバーバッチ化して、「MIXLAND+」というブランド名にて販売している。その商品リストは表2のとおりである。主とするグレードは75%または80%のゴム薬品濃度になっており、その他がポリマーバインダーとオイル分となる。特徴はバインダーに特殊アクリルエラストマーを使用していること。バインダーとゴム薬品との混合には、連続式特殊混練り機を使用していること。すべてのマスターバッチ製品は網目サイズが140ミクロン、500ミクロン(一部は100ミクロン、200ミクロン)のメッシュスクリーンを通して網通し(ストレーニング)がされていることである。
またMLPC社が製造するゴム加硫促進剤だけでなく、硫黄、酸化亜鉛、老化防止剤、スチールコードのレゾルシノール接着に共に使用されるヘキサメチレンテトラミンも同じくMIXLAND+として薬品マスターバッチ化されている。
現在欧米ではタイヤメーカー以外では、ゴム加硫促進剤は、マスターバッチ化されたものを使用することが一般的になっており、その使用比率は、日本より高い。これは加硫促進剤を計量する作業者、混練機(ミキサー、ロール)への投入混練作業者への健康、環境を配慮した結果である。タイヤ工場では自動計量でクローズドされた環境での混練が一般的なため、粉体、グラニュール状での加硫促進剤が一般的である。
MLPC社の薬品マスターバッチでは、バインダーに極性があるアクリル系エラストマーを使用しているため、極性のあるゴムポリマー、例えばSBR、NBR、CR、NRへの薬品マスターバッチの分散が速く、混練り時に短い時間で薬品が分散していく。もちろんEPDM等極性のないポリマーでも分散は良好である。このアクリル系エラストマーは樹脂の性質も持っているので、常温では、一般的な薬品マスターバッチに見られるような、保管時のマスターバッチの粒同士のくっつき問題が発生しない。また80℃以上の練り状態では、樹脂分が融点以上になり、(実際には70℃以上で樹脂が軟化してゴムに混ざり始める)急速に溶解するため、EPDM、EVAをバインダーしている一般的なゴム薬品マスターバッチと比較して、より低温でゴム薬品がゴムマスターバッチに練りこまれていく。特にB練りにおいて、より低温で練りたい場合、またスコーチを防ぐため、より短時間で練り上げたい場合に、このMIXLAND+の薬品マスターバッチは非常に有効であり、その目的に欧米では広く使用されている。またニーダー練りのあとSPMを使用してシート化するときに、SPMのホッパーにB練りされたゴムコンパウンドが長い時間とどまっているので、ロールに比べてスコーチしやすく、そのためMIXLNAD+の使用は有効である。さらに柔らかいコンパウンドの場合、より低い温度で分散でき、さらに相溶性があるバインダーを使えば、より早く分散できるMIXLAND+はすぐれた薬品マスターバッチである。
これらのゴム薬品をマスバーバッチ化する時には一般的にはニーダーミキサーを使用して薬品とバインダー、オイルを混練りして混ぜていくことが多いが、MLPC社のMIXLAND+は特殊な連続式混練り装置を使用することから、連続的に生産するため、製品の品質ばらつきが少ないことが特長である。これは8つの混練り部屋をもつ混練機で、それぞれの部屋にてローター羽根にて薬品、バインダーポリマー、オイルを混練りし、さらにそれが次の部屋に連続的に押し出され、8つの混練り部屋で異なるローター羽根、異なる温度で混練りされ、最後にストレイナー金網を通過してペレタイザーにて6mm径、5mm長程度のシリンダー状になる。
ストレイナーでメッシュスクリーンを通過しているので、未分散の硬い薬品粉末粒がなく、薬品の分散が保証されている。特に硫黄マスターバッチ、酸化亜鉛マスターバッチ、高融点で分散が難しいMBTSマスターバッチは安心して使用できる。
最近では新グレードMIXLAND NEW GENとして、バインダーをEPDM、EVA系を使用した薬品マスターバッチも上市しており、他社のマスターバッチに比較して、バインダー成分はほぼ同じ化学成分を使用しているが、連続式混練り装置を使用しているので、ロット間のばらつきが少ないことと、