バイオマスポリウレタン原料「エコニコール®」の開発とサスティナビリティーの実現に向けて

2021年02月25日

ゴムタイムス社

*この記事はゴム・プラスチックの技術専門季刊誌「ポリマーTECH」に掲載されました。
*記事で使用している図・表はPDFで確認できます。

特集1 バイオプラスチックの現状と将来展望

バイオマスポリウレタン原料「エコニコール®」の開発とサスティナビリティーの実現に向けて

三井化学SKCポリウレタン㈱ 蟻川英男

1.はじめに

 近年の気温上昇に伴い、降雨量・降雪量の変動や海面上昇のほか集中豪雨や台風発生による洪水被害等、直接生物の生死にかかわる自然災害の発生頻度が高まっている。それらの状況の引き金と言われている地球温暖化問題に対する対応は、人類にとって喫緊の課題であるといっても過言ではない。地球温暖化の原因の一つとして温室効果ガスの増加が指摘されており、その代表例は二酸化炭素(以下「CO2」と略す)やフロン類で、特にCO2は大気中に多く存在し、さらに生活の営みの中で数多くが大気中に放出されており、増加の一途を辿っていると言われている。つまり、地球温暖化対策ではCO2の削減が重要な課題となっている。
 そこで、当社ではCO2削減を目的に、植物由来のバイオマスポリウレタン材料の開発に着手し、バイオマスポリウレタン原料「エコニコール®」を上市した。
 本報では植物由来のバイオマス材料がなぜCO2削減に貢献するのか、ポリウレタン原料として植物由来であるひまし油をなぜ選択し、どのようにバイオマスポリオールである「エコニコール®」を開発し、ポリウレタンフォームとして用途展開したのかを説明する。さらに、もう一歩踏み込んだサスティナビリティーの推進を目的にひまし油の原料であるトウゴマ(ヒマ)を育てる農家との協働について紹介する。

2.バイオマス材料のCO2削減への貢献

 植物は光合成により大気中のCO2を吸収し成長する。一方プラスチックのリサイクルを、主流であるサーマルリサイクル(熱回収によるエネルギー再生)で行うと、燃焼時にCO2を大気へ排出する。そこで植物を原料としたプラスチック(バイオマス材料)の製造ができれば、原料製造時に大気から吸収するCO2とサーマルリサイクル時に発生するCO2とが相殺でき、地球規模でのCO2発生を抑制することが可能と考えられる。これがいわゆるカーボンニュートラルの考え方である。(図1)
 すなわち、プラスチックの原料を植物由来に転換ができればカーボンニュートラルの考え方により地球規模でのCO2削減への貢献ができる。

3.ポリウレタンとバイオマス原料の概要

 ポリウレタンは、イソシアネートとポリオールが反応し生成したウレタン結合(─NH─CO─O─)を有するプラスチックで、一般的には高強度、高弾性を有している。そのため、クッション材に代表されるフォーム材や塗料、接着剤、シーラント、エラストマー等多種多用な用途に使用されている。特にフォーム材用途では、単なる機械物性を発現させるだけでなく断熱性や遮音・吸音性といった新たな機能を付与したユニークな製品も多種生み出している。
 今回ポリウレタン原料のうちポリオールを植物由来原料へ変換することにより最終製品であるポリウレタンをバイオマス化する手法で開発を行った。(図2)

4.ひまし油由来のバイオマスポリオール「エコニコール®」の開発

 ポリオールは分子内に水酸基(以下「OH基」と略す)を含有する化合物で、特にフォーム材料として

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