ランクセスは2月25日、ベルギーのアントワープにある製造拠点で亜酸化窒素還元プラントの稼働を10日に開始し、クライメイト・ニュートラル(気候中立)を実現するための新たな一歩を踏みだしたと発表した。このプラントでは、年間約500tの亜酸化窒素を分解するが、これが気候に与える影響はCO215万tに相当する。プラント建設にあたって、同社はおよそ1000万ユーロを投資した。2023年に操業開始を予定している第2プラントでは、さらにCO2換算で30万t相当の削減が見込まれる。
亜酸化窒素(N2O)は笑気ガスとしても知られているが、これは、アントワープの製造拠点でプラスチック中間体であるカプロラクタムを製造する際に生成される。人体には害はないが、環境には二酸化炭素の300倍もの害を及ぼす。同社の新プラントでは、摂氏約1000度で亜酸化窒素を無害な窒素と酸素に分解し、完全に中和している。
次の工程においては、プラントはさらに窒素酸化物(NOX)を分解する。このとき、還元剤としてアンモニアが使用される。窒素酸化物は、摂氏250度から450度の間で分解され窒素と水を生成する。
これらのプロセスを組み合わせることにより、プラントは非常に高い熱効率を実現する。これは、特別に開発したセラミックス熱交換器により可能になった。これら熱交換器は熱を捉えて蓄積するが、その熱は熱酸化の過程で用いられ、亜酸化窒素と窒素酸化物を分解する際に発生する。熱交換器が清浄な気体からの熱を蓄積すると、工程フローの向きが変わり、今度は流入してきた排気の予熱を行う。この工程フローの方向転換が繰り返し行われることで、極端に少ない外部エネルギー供給でプロセスは稼働し続けることが可能となる。
アントワープのプラントに加え、同社グループでは現在、2040年までにクライメイト・ニュートラル(気候中立)を達成することを目指し、さらなる気候保護プロジェクトに取り組んでいる。2019年に同社は、2025年までに自社の気候保護プロジェクトに最大1億ユーロを投資すると発表している。