*この記事はゴム・プラスチックの技術専門季刊誌「ポリマーTECH」に掲載されました。
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シリーズ連載② 現場に役立つゴムの試験機入門講座
第7回 比重試験について
蓮見―RCT代表 蓮見正武
本来、密度(density)と比重(Specific Gravity)は区別されるものですが、ゴム業界では同じ意味に使われているので、本稿でも区別はしません。
比重あるいは密度は製品規格に規定されることは滅多にありませんが、コンパウンド検査ではほぼ100%行われている重要試験項目です。
ゴムの比重は各配合剤の比重の総和なので配合によって一定の値となり、配合のミスを簡便に検出できるからです。
スポンジの比重は発泡倍率を表すと同時に強度や圧縮力にも関連するので製品規格に定められることが多いです。
それだけでなく、比重はバンバリー、加圧ニーダーの仕込み量を決める際に必要であり、金型に仕込むゴム量を決めるときにも比重が必要です。
また、液体配合剤、粉体配合剤の比重は品質を表すものとして重要で、中国のゴム工場では薬品の受入検査を比重、融点、赤外分光分析などで当たり前に行っています。
ゴムに関する密度・比重試験の規格
●ISO 2781:2008
Rubber, vulcanized or thermoplastic-Determination of density
●JIS K6220-1:2015
ゴム用配合剤-有機薬品-試験方法-第1部:全般
Rubber compounding ingredients-Organic chemicals-Test methods-Part 1:General
●JIS K6268:1998
加硫ゴム-密度測定
Rubber,vulcanized-Determination of density
新JIS体系移行の際に制定されました。
●JIS K6313:2012
再生ゴム
Reclaimed rubbers
●JIS K6316:2017
ゴム粉の試験方法
Vulcanaized crumb rubber-test methods
●JIS K7112:1999
プラスチック-非発泡プラスチックの密度および比重の測定方法
Plastics-Methods of determining the density and relative density of non-cellular plastics
●ASTM D1817-05( 2016)
Standard Test Method for Rubber Chemicals-Density
(JIS K6220-1に相当する規格です)
●中国規格GB/T533-2008
硫化橡胶或热塑性橡胶 密度的测定
Rubber,vulcanized or thermoplastic-Determination of density
比重試験の変遷
ゴムの比重の試験方法はJIS K6301「加硫ゴム物理試験法」には規定がなかったので、長い間空白でした。JIS K6350「ゴム製品分析方法」に規定がありましたがあまり知られておらず、JIS K6220「ゴム用配合剤の試験方法」、JIS K6313「再生ゴム」、JIS K7112「プラスチックの比重測定方法」、などを準用していました。
JIS K6268「加硫ゴム-密度測定」はISO 2781に基づいて1998年に制定され、その後20年経過しましたが一度も改正されていません。そのため他の物理試験方法は加硫ゴムだけでなく熱可塑性ゴムも含めた試験方法になりましたが、JIS K6268は唯一「加硫ゴム」だけがタイトルのままになっています。
比重試験は昔から材料検査(バッチ検査)として行われていました。比重液による浮沈法などの例外はありましたが、ほとんどは空気中質量と水中質量から体積を求める水中置換法(アルキメデス法)でした。
化学天秤を用いて毛髪で試験片を吊るして水中質量を測定していましたが、加硫ゴム専用測定器としてYoung比重計(図1)やAvery比重計(図2)も使われていました。
JIS K6313:1999「再生ゴム」の密度の測定はJIS K6268の6.1(A法)、6.2(B法)に並んで今もヤング比重計が挙げられています。
デジタル式電子天秤が使われるようになって比重計も電子化が進み、ミラージュ貿易(現アルファ・ミラージュ)の電子式比重計(図3)などが広く普及しました。
現在は自動式比重計や50ケの試験片を無人で測定する全自動式比重計も作られています。(図4)3)
アルキメデスの原理について
今さら言うまでもないことですが、アルキメデスの原理とは「静止している液体の中に沈んでいる物体は、その物体が押しのけている液体の重さに等しい力で上向きの浮力を受けている」、言い換えれば、水中の物体はその体積分軽くなる、ということです。(図5)
紀元前220年にアルキメデス(写真1)が発見し、この原理を応用して黄金の王冠の中に銀が混ぜられていることを証明したと言われています。アルキメデスは入浴中にヒントを得て、「ヘウレーカ(分かったぞ)」と叫びながら裸で王宮に走っていったという逸話も残っています。ちなみに、金に銀を混ぜた時の密度は表1になります。
その他の比重測定方法 比重瓶(ピクノメーター)
通常はゴム薬品など粉体の比重測定に使われますが、加硫ゴムについてもJIS K6268:1998のB法として規定されています。(図6)
内容積既知の比重瓶にゴム片と水を入れ、質量から計算します。±0.002と最も精度が高い方法ですが、日常の検査では行われません。
ファイアストーン式デンシメーター (図7)
未加硫ゴムの比重測定に使われ、100g±0.1gの未加硫ゴムを円筒状の試料室に入れ、