*この記事はゴム・プラスチックの技術専門季刊誌「ポリマーTECH」に掲載されました。
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特集1 多様な要求に対応する樹脂添加剤・フィラー活用法
プラスチック用永久帯電防止剤
三洋化成工業㈱ 徳永浩信
1.はじめに
プラスチックは優美な美観、成形性、軽量性、電気絶縁性から身の回りのあらゆるところで使用されている。一方、絶縁性であるために生じる障害も多い。摩擦帯電などによって生じた静電気により空気中のほこりや汚れを吸着し美観を損ねたり、成形中にフィルム同士がはり付くなど、プラスチック製品の製造、加工、使用時にいたるまで種々のトラブルが発生することがある。また、静電気放電による電子機器や精密電子部品などの電子回路の破壊や誤作動、スパークによる火災や粉じん爆発といった災害などの静電気障害を引き起こすこともある。
このような静電気による問題を回避するためには、プラスチックを使用する目的に応じて、表11)に示すように表面固有抵抗値を制御することが必要である。一般的なプラスチックの帯電防止方法を図12)に示す。
帯電防止剤は、この表面固有抵抗値を制御するために使用されるものであり、発生した静電気を速やかに逃がす役目を果たす。
2.帯電防止方法の種類
プラスチックの改質による帯電防止技術として、界面活性剤(以下、低分子型帯電防止剤)を表面に塗布する方法と内部に練り込む方法がある。プラスチック表面に存在する親水性の高い低分子型帯電防止剤が、空気中の水分を通して静電気を漏えいさせることで帯電防止性を付与することができる。
しかしながら、これらの方法では帯電防止性の効果の持続性が乏しく、水洗いや布拭きなどで効果が低下する。また、空気中の水分吸着を利用しているため、湿度依存性が大きいなどの欠点もある。
これらの欠点を解消する方法として、カーボンブラックを導電性フィラーとして添加する方法がある。この方法は、プラスチック中に分散した導電性フィラーが電荷の通り道である導電回路を形成することで導電性を付与しており、効果の持続性や湿度依存性に優れている。しかし、一般的には電子部品・回路の保護として最適な107~109Ω範囲の表面固有抵抗値を安定に