東ソーは3月15日、「革新技術による微細組織制御ジルコニアの事業化と新展開」で、市村清新技術財団が主催する「第53回市村産業賞」において功績賞を受賞したと発表した。受賞者は無機材料研究所副理事上席研究員の松井光二氏、高機能材料事業部執行役員高機能材料事業部長の大道信勝氏、元副理事で同社OBの大貝理治氏。
1980年代に開発された高強度ジルコニアは、各社がセラミックスの主役になることを期待して実用化に取り組んだが、当時のジルコニアは粉末製造技術が経験を基に構成されており、品質の安定化や量産化が困難な状況だった。同社は、上記課題に取り組み、高強度ジルコニアに代わる微細組織制御ジルコニア(MCZ)を提案すると共に、品質安定性に優れたMCZ粉末の高生産性プロセスを確立した。次に、粒界ナノ構造・ナノ化学制御技術により広範な用途に使用できるように機能を強化した高耐久性及び超高耐久性を特長とする次世代MCZを開発し、更には高強度を維持して靭性を大幅に向上させた次世代MCZの創出にも成功した。
このような長年の研究開発で生まれた革新技術は、ジルコニアの素材としての可能性を大幅に広げ、様々な分野での用途開発を加速させ、光接続部品、粉砕・分散メディア、審美歯科材料等で実用化され、市場形成を大きく進展させた。これにより、日本だけでなく世界の歯科市場を始め各産業に大きく貢献すると共に、今後は高度な信頼性が要求される広範な分野での展開が期待されている。
市村産業賞は、市村清氏の昭和38年4月29日紺綬褒章受章を記念して創設され、わが国の科学技術の進歩、産業の発展に顕著な成果をあげ、産業分野の進展に多大な貢献・功績のあった技術者を表彰する権威ある賞で、同社のこれまでのジルコニアの技術開発及び事業化の進展と将来性が高く評価され、今回の受賞に至った。