東レは3月23日、「分子シミュレーションを用いたフッ素ポリマーの界面自由エネルギー予測技術の開発」について、日本化学会より「第26回技術進歩賞」を受賞したと発表した。
日本化学会による「技術進歩賞」の授与は3年ぶり、同社の受賞は第20回以来、6年ぶり6度目となった。
今回の受賞は、スーパーコンピュータを活用した大規模な分子シミュレーションにより、フッ素ポリマーの接触角と液体の界面自由エネルギーを定量的に予測することに同社が世界で初めて成功し、分子レベルでの表面構造設計技術を開発したことで、開発期間の短縮が期待されるという点が評価された。
界面自由エネルギーの評価には一般的に接触角測定が用いられ、簡便な測定手法ながら表面の官能基や形状を高精度で測定できる。しかし、マクロな接触角とミクロな分子レベルでの表面構造との相関の明確化が容易ではないため、分離膜設計のコンセプト実証は試行錯誤的に進めざるを得ず、開発期間が長期化する一因となっていた。
同社は、新エネルギー・産業技術総合開発機構による「超先端材料超高速開発基盤技術プロジェクト」において、先端素材高速開発技術研究組合に参画し、名古屋大学の岡崎 進教授(現・東京大学)との共同研究を通じて、長年培ってきた独自の分子シミュレーション技術を深化させ、モデル材料として水処理膜製造に用いられるフッ素ポリマーを選択し、大規模分子シミュレーションによる界面自由エネルギーの定量的予測を実現した。
同社は今後、シミュレーションやインフォマティクスを活用したデジタル材料設計の発展を進めていくとしている。