ランクセスは3月29日、世界初のカーボンファイバー製スマートフォンの筐体に、同社の熱可塑性コンポジットシート「テペックス」が採用されたと発表した。ベルリンを拠点とするスタートアップ企業カーボン・モバイル社は、軽量性、スリムなデザイン、サステナビリティの新しい基準となるスマートフォンとして、今年3月に「Carbon1MKⅡ」を発売する。
同スマートフォンの筐体に使われたベース素材が、同社の熱可塑性コンポジットシート「テペックス・ダイナライト」シリーズで、極めて細い1Kの連続カーボンファイバーフィラメントで強化された連続繊維となっている。
F1カーの耐荷重シャーシと同じ構造原理に従って、同スマートフォンの筐体はモノコック(シングルシェル)として設計されている。その結果として、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の極めて高い剛性を最大限に活用している。筐体内部のスペースを圧迫する補強材が不要なため、スマートフォンの薄型化と軽量化に大きく貢献し、小型化も可能にしている。
カーボンファイバーは、強靭かつ軽量な構造体の製造に高い適性を持つが、同時に電磁シールドとして作用し、外部からの無線信号を遮断して内部からの信号も通過させずに構造体の外側に分散させる「ファラデーケージ」を形成する。このため、テクノロジー業界では、カーボンファイバーでのコネクテッドデバイスの製作は不可能であると見なされてきた。
しかし、4年に及ぶ研究開発の末に、カーボン・モバイル社のエンジニアは、コネクテッドデバイスに対するカーボンファイバーの可能性を切り開く革新的なプロセスを開発した。特許取得済みのHyRECMテクノロジーは、カーボンファイバーに、RF信号を透過させることができる補完的な複合材を融合させるもので、さらに、デバイスの接続性を高めるために、カーボンファイバーの構造には3Dプリンティングされた独自の導電性インクが結合されている。「Carbon1MKⅡ」で初めて利用されたこの新技術は、非常に薄くて軽いだけでなく、プラスチックの使用を5%未満に抑えた、強靭なカーボンファイバー製の筐体構造を生み出す。