合成ゴム・化学メーカーの21年3月期決算から、合成ゴムやエラストマー原料など化学部門の現況をピックアップした。新型コロナウイルス感染症拡大の影響を大きく受けて販売数量が落ち込んだことから全社売上は11社中9社が減収となった。
◆JSR
エラストマー事業は、SSBRの販売数量は、世界のタイヤ生産量が対前期で減少する中前期対比では同水準となったが、事業全体の販売数量が伸び悩み、原料市況下落による販売価格の下落も重なり、売上収益は前期を下回った。
◆日本ゼオン
エラストマー素材事業は、合成ゴム関連では、自動車産業向けを中心に需要は回復傾向となったが前半の落ち込みを挽回するには至らず、減収となった。高機能樹脂は、光学樹脂、光学フィルムともに販売が堅調に推移し、増収増益となった。
◆三井化学
エラストマー、機能性コンパウンドともに、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、販売が減少した。
◆住友化学
新型コロナウイルス感染症拡大の影響に伴う経済活動の落ち込みにより、自動車関連用途を中心に合成樹脂などの出荷が減少した。また原料価格の下落に伴い、石油化学品などの市況が低水準で推移した。
◆旭化成
マテリアルは売上高は9912億円で同1019億円の減収、営業利益は665億円で同259億円の減益となった。
第2四半期より自動車関連市場や石化製品市況の回復等を背景に業績が回復したが、第1四半期を中心にCOVIDー19による影響を大きく受け、減収減益となった。
◆宇部興産
合成ゴム事業はコロナ影響で上期に大きく減少したタイヤ向けの出荷が下期に回復した。ただ、製品市況が下落したことから、減収減益となった。
◆デンカ
クロロプレンゴムの販売は、足もとでは回復傾向に転じてきたが、感染症拡大などによる世界経済低迷の影響を大きく受け、全般的に生産活動が停滞したことから前年を下回った。また、スチレンモノマーやABS樹脂、デンカシンガポール社のポリスチレン樹脂およびMS樹脂の販売は堅調に推移したが、原材料価格の下落に応じた販売価格の見直しを行ったことにより減収となった。
◆東ソー
クロロプレンゴムは、アジア地域の需要回復に伴い出荷が増加したが、輸出価格は下落した。営業利益は、交易条件の悪化やナフサ等原料価格下落による製品受払差の悪化により減益となった。
◆クラレ
イソプレン関連は、ファインケミカルで中国向けを中心に出荷が減少した。熱可塑性エラストマーは、米国の需要が堅調に推移したが、アジアの販売は苦戦した。
◆信越化学工業
シリコーンは汎用製品の価格下落に加え、化粧品向けや車載向けの需要鈍化の影響を受け、減益となった。ただし秋口からほぼ全分野で顧客需要は回復してきている。
◆ダイキン工業
フッ素樹脂は、世界的な半導体及び自動車関連の需要が中国市場を中心に回復基調にあるものの、上期での落ち込みの影響が大きかったことに加え、米国での建築・航空機需要の落ち込みもあり、売上高は前期を下回った。フッ素ゴムも、自動車関連分野の需要は中国市場を中心に回復してきているものの、売上高は前期を下回った。
2021年06月02日