主要上場ゴム企業の21年3月期連結決算が出揃った。JSR・日本ゼオンの合成ゴム大手2社を含む22社の21年3月期連結決算は、減収減益企業が13社となった。
22社合計の売上高は3兆1605億800万円で前期比8・5%減。22社のうち増収企業は0社(前年同期は3社)となった。売上高は全社で減収となり、減収企業は前年の19社(同一企業との比較)から3社増加した。
21年3月期業績を振り返ると、やはり新型コロナウイルス感染拡大がゴム上場企業の業績に大きな影響を及ぼす結果となった。世界各国でコロナ感染防止対策として、ロックダウン(都市封鎖)などの措置が実施されるなか、経済活動が一時停止した。ゴム上場企業の主要取引先である自動車業界では、ロックダウンで各国の自動車工場が一時操業を停止し、中国や米国、日本などの20年の自動車生産台数は前年を下回る結果となった。このことがゴム企業の売上減少に大きくつながったとみられる。
ただし、自動車生産については、一足先に経済回復した中国が当初予想よりも早く生産を回復させたほか、米国、日本でも生産の回復基調が続いている。このため、自動車生産は回復基調が鮮明だ。これを受けて、上場ゴム企業の下期業績については当初予想よりも上振れし着地した企業が多かった。
営業利益は1473億1900万円で同7・5%増。営業減益企業は13社となり、前年の17社(同一企業との比較)から4社減少した。22社全てが減収となったものの、前期比で営業利益がプラスとなったのは、豊田合成や日本ゼオン、NOK、オカモトなど比較的営業利益額の大きな企業が前期比で利益を伸ばしたことが大きい。
また、減益企業でもコロナ影響による販売減による利益減少を、徹底した経費削減や原価低減活動を行うことで利益の落ち込みを最小限に食い止めた企業が目立った。
営業増益企業は、豊田合成、日本ゼオン、ナンシン、藤倉コンポジット、不二ラテックスなど7社となった。このうち、不二ラテックスは、生産合理化と投資計画の見直しや諸経費の節減を実施したことで同652・9%の大幅な増益となった。
経常利益は775億5800万円で同47・1%減。経常増益企業は10社で前年の4社(同一企業との比較)から6社増加した。なお、豊田合成と住友理工、バンドー化学、JSRは国際会計基準(IFRS)を採用しているため、4社の経常利益は便宜的に税引前利益の数値を使用している。
四半期純利益は323億8200万円で同60・8%減となった。このうち、JSR、NOK、住友理工、櫻護謨、昭和HDの5社が純損失となった。特に、JSRはエラストマー事業の構造改革により772億円の減損損失を計上し、計551億円の赤字となった。
22年3月期通期業績予想は、5月24日時点で公表した22社中、昭和HDのみがグループを取り巻く事業環境が目まぐるしく変化していることから、業績予想の公表を差し控えるとした。
22年3月期の業績見通しは増収予想の企業は17社、営業増益予想の企業は11社となった。 自動車生産の回復や半導体需要の高まりを背景に、ゴム企業の業績は20年度後半から回復基調が鮮明となっている。今期もその流れが続くと想定する企業が多い。ただ、足元では国内のコロナ感染拡大が続いている上、半導体の供給不足、原材料費の上昇などもあり、業績回復の下振れリスクへの懸念は残る。
このうち、豊田合成は、顧客の生産回復に伴いコロナ以前の水準に戻る見込みとし、売上収益は8400億円で前期比16・4%増、営業利益は530億円で同45・3%増、経常利益は535億円で同43・4%増、当期純利益は300億円で同14・8%減を見込む。
一方、JSRは5月11日にエラストマー事業を非継続事業に分類することに伴い、4月26日に発表した通期業績を修正した。売上収益は3180億円で前期比28・8%減、コア営業利益は430億円で同65・6%増、当期利益は270億円を見込んでいる。