三井化学は5月20日、2050年のカーボンニュートラルの実現に向けて、フィンランドの世界有数のバイオマス燃料の製造会社であるネステ社及び豊田通商と同月、バイオマスナフサの調達に関する売買契約を締結したと発表した。
同社は、21年度3Qから4Qにかけて、大阪工場のエチレンプラント(クラッカー)に日本で初めてバイオマスナフサを原料として投入する。同時に、マスバランス方式によるバイオマスナフサを原料としたフェノールなどのバイオマス化学品やポリオレフィンをはじめとしたバイオマスプラスチックの製造・マーケティングを開始する。
ネステ社は、発展型再生可能ディーゼルでは世界トップのシェアを誇るバイオマス燃料のサプライヤーであり、ネステ社のバイオマスナフサは、植物油廃棄物や残渣油を原料に製造される。今回、バイオマスナフサを使用することで、原料からプラスチック製品が廃棄されるまでのライフサイクルにおけるCO2は、石油由来ナフサ使用時に比べて大幅に削減されることが見込まれる。
同社は、バイオマスナフサをエチレンプラントに投入し、エチレン、プロピレン、C4留分、ベンゼンといったバイオマス基礎原料を生産する。それらバイオマス基礎原料をもとに、フェノールなどの基礎化学品、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン類を製造するため、バイオマス誘導品の品質は既存品と同等になる。
同社及び豊田通商は、バイオマスの認証制度として欧州で広く採用されているISCC認証を取得する予定としている。ISCC認証はEUのバイオマス燃料等の認証として既に広く認知されており、複雑な生産工程を持つサプライチェーンのバイオマス化を推進させるマスバランス方式の有効な認証制度になる。既に紙、パーム油など多様な業界で適用されているマスバランス方式に基づき、バイオマス原料の割合を認証済みの手法で最終製品に割り当てることで、顧客は自身の意思で使用原料のバイオマス化を選択することができる。同方式は複雑な原料体系と誘導品、複雑なサプライチェーンを持つ化学業界がカーボンニュートラルを実現するために必須のアプローチであるため、マスバランス方式及びISCC認証は今後化学業界でも広がっていく見通しとなっている。