東レは5月24日、『抗血栓性人工腎臓の開発と工業化』について、日本化学工業協会(以下「日化協」)より21日に「第53回(2020年度)日化協技術賞総合賞」を受賞したと発表した。同社の「日化協技術賞総合賞」受賞は、第49回(2016年度)に続き今回で6度目となる。
今回の受賞は、透析治療の進歩に伴い人工腎臓に対しても抗血栓性を向上させるニーズが年々高まっている中、同社のコア技術であるナノテクノロジーと計算化学を駆使し、抗血栓性を著しく向上させたポリスルホン膜人工腎臓の製品化に成功したことが評価された。
同開発内容は、慢性腎不全用のみならず、急性腎不全用の人工腎臓の製品化に成功し、患者の生活の質(QOL)の向上や医療スタッフへの負荷軽減に貢献する。
人工腎臓は、腎不全患者の血液を体外に循環させ血液中の老廃物を除去する透析療法用の医療機器で、現在、主流のポリスルホン系素材は親水性のポリビニルピロリドン(PVP)をブレンドすることで抗血栓性を付与しているが、さらなる機能性向上が望まれていた。同社は、ポリマーと相互作用する水(吸着水)の運動性に着目した独自仮説のもと計算化学も活用し、ポリマー設計を進めた。その結果、PVPより血小板の付着を大幅に抑制できる新規抗血栓性ポリマー(NVポリマー)を見出し、慢性腎不全用および急性腎不全用の人工腎臓の開発・工業化に成功した。
今回の受賞技術については、慢性腎不全用の血液透析器トレライトNVや、血液透析濾過器トレライトHDF、トレスルホンNV、急性腎不全用の持続緩徐式血液濾過器ヘモフィールSNVに適用され、抗血栓性向上による患者QOLの向上や医療スタッフの負荷軽減に貢献し、臨床でも高い評価を得ている。
同社は、同技術を活用した高付加価値医療材料の開発推進により、企業理念である「わたしたちは新しい価値の創造を通じて社会に貢献します」を具現化し、社会貢献とともに持続的な成長拡大を目指していくとしている。