住友ベークライトは6月10日、フェノール樹脂の特徴を維持したまま、使用時のVOC、環境負荷を低減することを目的とし、シート状の熱硬化性レゾール型フェノール樹脂を開発したと発表した。
従来の有機溶媒を使用した液状レゾール型フェノール樹脂と比較して、VOC削減による作業環境の改善が見込めるとともに、塗工の安定性など機能面での向上も期待できる。同社では主力の自動車分野をはじめ、今後各種分野に熱硬化性の環境対応プラスチックとして提供する。
一般的なレゾール型フェノール樹脂溶液は、そのまま溶媒を乾燥させると粘着質な高粘度液体となり、そのままではシート形状にすることはできない。これに対し同社はフェノール樹脂の変性技術を生かし、少ない変性量でフェノール樹脂の特徴を強く残しつつ、シート化可能なフェノール樹脂を見出した。このフェノール樹脂溶液を離型フィルム状に塗工し、乾燥させることでシート状のフェノール樹脂となる。
一般的な有機溶媒系の溶液状フェノール樹脂には50~70%の有機溶剤が含まれているが、同フェノール樹脂シートに含まれるVOC成分は5%以下と、溶液状フェノール樹脂と比較して10分の1以下にVOCが低減されている。
フェノール樹脂シートはさまざまな使用法が想定されるが、一例としてプラスチック部品―金属やプラスチック製品同士の接着剤がある。被着体にフェノール樹脂シートを貼り付け、別の被着体を押し付けて熱プレス等で加熱硬化することで高い耐熱性をもつ接着面が得られ、250℃以上の高い耐熱性が要求される部材では有用な接着剤となる。また、鉄板同士を接着した場合、溶液状のフェノール樹脂と比較して10%以上高い接着強度を示すことが確認できた。
接着以外の使用方法としては、含浸用としてプリプレグやFRPのバインダーも想定される。フェノール樹脂シートを基材に重ねて溶融、硬化させることで、有機溶剤の使用や設備制限なしにプリプレグを作製することも可能となる。