東レは7月13日、PBT樹脂が有する寸法安定性や成形加工性を維持しながら、高周波ミリ波帯における誘電損失を従来比約40%低減した高性能PBT樹脂を開発したと発表した。
同開発品は、5G通信用基地局や自動運転に向けた車載高速伝送コネクタや通信モジュール、ミリ波レーダー等の性能向上に大きく貢献する。同社は本格的にサンプルワークを開始し、5G通信用材料としての要求に応えるとともに、先進運転支援システム(ADAS)や自動運転に代表される高度道路交通システム(ITS)分野の用途開発を進めていく。
PBT樹脂は、寸法安定性、強度等の優れた性能バランスと成形加工の良さから、自動車部品、電気・電子部品用途をはじめ、様々な用途に使用されている。近年、自動運転などに用いられる高周波部品用途などでは、伝送ロスの低減のため誘電損失の改善が求められており、ポリマーアロイや充填剤を添加する方法が用いられている。しかし、PBT樹脂自体の誘電損失が大きいため、誘電損失の低減に限界があり、さらに耐熱性や機械物性が低下する課題があった。
同社は、ポリマー重合技術で実現した新規ポリマー構造により、高周波領域でのポリマーの分子運動を抑制することで、PBT樹脂本来の基本特性を損なうことなく、高周波ミリ波帯(79GHz)における誘電損失が従来比約40%低減となる誘電正接0・006を実現した低誘電損失PBT樹脂を開発した。
同開発品は、5G通信の周波数帯であるsub6から高周波ミリ波帯の広範囲で低誘電損失化を維持し、高温や多湿環境下での誘電特性の安定性に優れている。高周波部品設計で課題となる伝送ロスが大きい広角度からの入射波に対しても、伝送ロスを低減し、広域なセンシングが可能となる。また、電気回路やコネクタの電気抵抗を従来同等に制御しつつ製品を小型化するのは困難だったが、同開発品は低誘電損失であることから電気抵抗を従来同等に抑制でき、小型化が期待できるなど、5G通信用材料やADAS、自動運転、ITS分野の部品設計の自由度を高め、製品の小型化や軽量化、性能向上に貢献する。
同社は、5G通信に適した各種樹脂を事業化しているが、今回開発した材料を新たにラインナップに加え、次世代の通信技術を支える半導体デバイス、電子部品などでの採用を進めていく。今後は、企業理念である「わたしたちは新しい価値の創造を通じて社会に貢献します」の具現化に取り組んでいくとしている。