BASFは8月2日、韓国の大手化学会社であるロッテケミカル社が、同社の優れた色相安定性を有した加工安定剤であるイルガスタブを使用し、医療用途に必要なポリプロピレン(PP)を製造したと発表した。
新型コロナワクチンの予防接種が世界中で展開される中、PP製の注射器のニーズは急激に高まっている。
ロッテケミカル社の医療用PPは、韓国の医療用注射器メーカーが開発したLDS注射器に採用された。注射後に注射器本体に残る薬剤の量を最小限に抑えるよう設計されており、ワクチンを無駄にすることなく有効活用することを目的とした特殊注射器となっている。その結果、同じ量のワクチンで20%増の人数への接種が可能になると推定され、LDS注射器は世界的に大きな需要が見込まれている。
また、医療用途に使用するプラスチックは滅菌処理が必要になるが、これによりポリマーの劣化や変色が起こる。同社アジア太平洋地域のパフォーマンスケミカルズ事業本部シニア・バイスプレジデントのハーマン・アルトフ氏は、「イルガスタブは、医療用PPが安全で適切な使用状態を維持するために役立っている。コンパウンディングや射出成形中にポリプロピレンに変色させることなく、加工安定性を提供する。これは、材料に高透明度の認証が必要なLDS注射器にとって非常に重要なことだ」と述べている。
新型コロナワクチン接種で注射器のニーズが爆発的に高まることが予想される中、ロッテケミカル社では、高強度PPをはじめとする医療材料の生産品質管理を徹底し、医療や安全に関するニーズの高まりに対応するため、特殊ポリプロピレン素材の開発を拡大している。
ロッテケミカル社のR&Dセンター長であるカン・ギョンボ氏は、「ロッテケミカルは医療用PP市場で確固たる地位を築いており、BASFと共にこの市場をリードし、発展させていきたいと考えている。イルガスタブは色調の保持や透明性に優れているため、繊維やシートへの使用拡大の可能性を評価している」とコメントしている。