*この記事はゴム・プラスチックの技術専門季刊誌「ポリマーTECH」に掲載されました。
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特集1 機能性フィルム・シートの最近の技術動向
樹脂原反フィルムの成形加工技術
㈱プラスチック工学研究所 辰巳昌典
1.はじめに
日本経済は、人口減少、グローバル化、IOT・AI・5G等のDX技術革新が急速に発達し、全産業分野で今までとは異なる次元への転換が始まっている。継続的事業展開には、常に新しい製品を市場に創生し、進化しなければならない。我々は、単純なコスト競争ではなく、顧客ニーズに対応したコストパーフォーマンスに優れたハード・ソフト一体型製品の市場への供給が要望されている。近年では、品質・コスト・利益だけではなく社会貢献・倫理を合わせた環境・社会課題解決のためのサステナビリティ製品が重要となる。達成するには、他社と連携し、挑戦的なフロンティア開発が重要である。市場は、商品寿命の短命化、ビジネススピードの高速化、マクロからミクロ、そしてナノ、ハードからソフト、リアルからバーチャル、単体からソリューションへと変化している。製品開発においては、汎用材料の構造制御による高機能化、エネルギー効率向上、再生可能エネルギーの活用、リサイクル管理(マテリアルリサイクル・ケミカルリサイクル・サーマルリサイクル)、循環型低炭素社会への移行を考慮した高精度、高速化、環境負荷軽減(省エネルギー)を織り込んだ革新的な成形プロセスの要求が高まり、原料およびその配合、成形加工設備、成形プロセスを一体としたカスタマイズが重要となる。一例として高速大容量通信では、今までの材料物性(低誘電)では対応できなくなりつつある。従来はポリイミド樹脂が使用されていたが、物性の優れた液晶樹脂やフッ素樹脂へ転換されつつある。科学技術の発展速度は速く、より薄く・強く・機能性の高いフィルムが要求されている。未来に起こりうる問題点をいち早く解決すべく開発を進めることが重要となる。ここでは、基盤となる樹脂原反フィルムの成形加工技術について示す。
2.フィルム・シート概要
フィルムは、キャスト法と押出成形法により成形される。キャスト法は、溶剤に熱可塑性または熱硬化性樹脂を溶解し、その溶液を高精度定量ポンプにより塗工金型へ供給し、ベルト上で膜化する。その後溶剤を乾燥により除去しフィルムとする。この製法は、溶剤を使用するとため、環境負荷が非常に高い。押出成形法は、熱可塑性樹脂を可塑化溶融し、膜化してフィ
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