日本触媒が複合膜を開発 耐水性の抗菌・抗ウイルスで

2021年10月18日

ゴムタイムス社

 日本触媒は10月14日、同社と北海道大学病院歯周・歯内療法科の宮治裕史講師のグループが水に濡れる環境などでも種々の菌や新型コロナウイルスの不活化効果を発揮する抗菌・抗ウイルス酸化グラフェン複合膜を開発したと発表した。
 酸化グラフェンは、ナノカーボン材料の一種であり、シート構造で、厚さ約1nm、幅数μmの大きなアスペクト比(厚みに対する幅の比)をもつ材料。酸化グラフェンは様々な用途で有効性が確認されており、幅広い分野で応用が期待されているが、工業規模での大量生産は困難だった。同社は工業化に向けた種々の課題を解決し、量産化技術を確立した。
 酸化グラフェンはその形状と多くの酸素官能基を活かし、各種基材へ高い付着性を持ち、様々な分子、ポリマーなどと強く相互作用することが可能。この特性を活かし、単独では基材への付着性が低い物質でも酸化グラフェンと複合化させることで基材密着性(耐水性や長期安定性)を向上させることが可能となった。
 抗菌・抗ウイルス分野では、耐水性が高く、長期に安定な抗菌・抗ウイルス効果を簡便な手法で発揮する技術が求められてきたが、一般的な除菌法や抗菌・抗ウイルス法では抗菌・抗ウイルス効果が持続しない、耐水性が低く、水周りや結露しやすい環境に弱いといった課題があった。
 このような課題に対して、開発した酸化グラフェンと抗菌・抗ウイルス剤(例えば塩化ベンザルコニウム)を複合化した膜は、抗菌・抗ウイルス剤を基材上に定着させ、水に濡れる環境等でも抗菌・抗ウイルス効果を発揮することを確認。これにより、水周りといった耐水性が求められる環境であっても長期に抗菌・抗ウイルス効果を維持することが期待できる。
 両者は抗菌・抗ウイルス性をさらに検証するため、新型コロナウイルスに対する抗ウイルス評価を行った。その結果、酸化グラフェン・塩化ベンザルコニウム複合膜では高い抗ウイルス効果が確認され、酸化グラフェンのみや塩化ベンザルコニウムのみでは抗ウイルス効果が小さいことが分かった。塩化ベンザルコニウムは高い抗菌・抗ウイルス効果をもつ物質として広く知られているが、単独では水洗により容易になくなってしまう。酸化グラフェンとの複合膜とすることで、抗菌・抗ウイルス効果を失うことなく、耐水洗性が向上している。

水洗後サンプルの抗コロナウイルス評価結果(24時間培養後の感染価)

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