JSRは11月5日、国立感染症研究所と共同開発した薬剤耐性菌に効果を発現するポリマー型抗菌成分を、糸及び不織布に添加し抗菌性能を確認したと発表した。作製した糸及び不織布は、黄色ブドウ球菌と大腸菌を99・9%以上低減し、更に糸では新型コロナウイルスとネココロナウイルスに対して99%以上のウイルスの数を低減させる効果が認められた。
ポリマー型抗菌成分は、高い耐熱性と両親媒性による樹脂との良好な相溶性がある。そのため、既存の加工プロセスを用いて、ポリプロピレンのマルチフィラメントによる紡糸、メルトブローン法による不織布、溶融押出法によるフィルムの作製が可能となる。また、既存の汎用プラスチック(ポリプロピレン、ABS樹脂、ブタジエンゴム、アクリル樹脂、ポリウレタン、3Dプリンター用樹脂)を製造する際に使用する添加剤として活用することもできるため、医療現場における院内感染抑制や在宅医療や介護現場での衛生状態の向上に貢献することが期待される。
今後、同社はポリマー型抗菌成分が含まれる汎用プラスチックのSIAA「抗菌マーク」の取得に向けた申請を予定している。
なお、同研究は日本医療研究開発機構(AMED)新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業(研究開発課題「抗生物質の再評価と既承認薬の再配置による新規抗菌薬の創製」)より支援を受けている。