旭化成がサステナブルなブタジエンを用いたS―SBRの生産を開始する。シンガポールのShell Eastern Petroleum社と廃プラスチックおよびバイオマス由来のブタジエン(サステナブルブタジエン)の購入に関する売買契約を締結したことを11月23日に発表した。
同社によると、廃プラスチック由来のブタジエンを使用する溶液重合スチレンブタジエンゴム(S―SBR)の生産は世界初。また、バイオマス由来のブタジエンを使用する(S―SBR)の生産は日本企業初の試みとなるという。このサステナブルS―SBRを用いた場合、タイヤのライフサイクルにおけるCO2排出量は、従来のS―SBRを用いたタイヤに比べて大幅に削減されることが期待される。CO2排出削減効果の大きいサステナブルブタジエンを用いたS―SBR生産を通じ、サプライチェーン全体のCO2削減に貢献していく。
同社では2022年3月末までにシンガポールにある同社の合成ゴムプラントにサステナブルブタジエンを投入するのと同時に、これらを原材料としたサステナブルS―SBRの生産およびマーケティングを開始する予定だ。
S―SBRは、主に省燃費型高性能タイヤ「エコタイヤ」に用いられる合成ゴム。近年、環境規制の強化や環境意識の高まりを背景に、世界的にエコタイヤの需要が拡大し、S―SBRは、タイヤの安全性能を確保しつつ省燃費性能を同時に向上させるエコタイヤに最適な材料として認められている。
また、2050年のカーボンニュートラル実現に向け、自動車業界ではEV(電気自動車)化、タイヤ業界ではタイヤのさらなる省燃費・耐摩耗性能向上などといった脱炭素社会を目指す取り組みが加速。そのため、エコタイヤの材料であるS―SBRでもさらなるサステナブル対応のニーズが高まっている。
そのような状況の中、同社では自動車の航続距離増加やEV化による車両重量増への対応といったニーズに応え、特に省燃費性能や耐摩耗性能の向上を重視したさらなる高性能品の開発を進めている。また、製品性能の向上にとどまらず、サプライチェーン全体でのCO2削減を目指しサステナブルな原材料への転換も検討している。
一方、Shell社は、2050年までにネットゼロのエネルギー事業体を目指し、化学品生産時のCO2排出量削減とサーキュラーエコノミーの実現に取り組んでいる。今回、Shell社はマスバランス管理されたサステナブルブタジエンを2つの製法で生産。1つは廃プラスチックを熱分解油に変換し、同社のナフサクラッカーにフィードする製法、もう1つはバイオ原材料を同ナフサクラッカーにフィードする製法となっている。