①ゴム製品・原料で年間通じて値上げ
21年も昨年に引き続き、ゴム・樹脂関連で値上げの動きが相次いだ。ナフサなど原材料価格の高騰を理由にゴム・樹脂とも値上げを表明する企業が相次いでいる。また、海外市況との価格差や物流費・人件費の上昇など理由とする値上げもみられた。
上半期のゴム関連ではタイヤ製品、シリコーン製品で価格改定が実施されたほか、東海カーボンがカーボンブラックの価格改定を行った。樹脂関連では、熱可塑性エラストマー、ポリエチレンの他、プラスチック添加剤などで値上げが行われた。
秋以降もゴム樹脂では価格改定が相次いだ。ゴムや樹脂、エラストマーを始め、ベルトやホース、パッキンやОリングなど自動車部品や工業用ゴム部品でも値上げの動きが拡がった。ゴム関連では、クロロプレンゴム等の原材料を始め、オイルシール・Oリング・パッキン等のシール製品、伝動ベルトや搬送ベルトなどのベルト製品、ホース製品、長靴などで値上げが行われた。
②JSRがエラストマー事業をENEOSに譲渡
JSRは5月11日、エラストマー事業を会社分割した上でENEOSに全株式を譲渡すると発表した。同社は新会社にエラストマー事業を継承させ、ENEOSが2022年4月をめどに完全子会社化する。譲渡額は第三者評価を参考に合意した1150億円をベースとする。事業譲渡に係る事業について、四日市工場はエラストマーに直接関わる部門と間接部門の一部が譲渡の対象。千葉工場については、デジタルソリューション事業を除くほとんどが対象となる。鹿島工場では全ての資産や事業が対象。同社本社でエラストマー事業に係る直接あるいは間接的に関わる部門も分割の対象となる。
譲渡先のENEOSを選んだ理由として、エリックジョンソン代表取締役CEOは、「ENEOSは素材の力で幅広い分野で事業展開し、業界のリーダーであること」、「ENEOS側も戦略的な事業
その後、エネオスは11月19日、2022年4月を目途にJSRより全株式を取得し、エラストマー事業の子会社・関係会社を承継する新会社の商号を株式会社ENEOSマテリアル)にすると発表。新会社の名称は株式会社ENEOSマテリアルとなった。
③ブリヂストンがコンベヤベルト事業撤退
ブリヂストンは11月1日、コンベヤベルト事業について2024年末をもって完全撤退すると発表した。同社のコンベヤベルト事業のグローバル連結売上高は2020年実績で約112億円。
同社はポートフォリオ経営を推進し、多角化事業は、事業再編などを通じ、シャープにコア・コンピタンスが活きる事業にフォーカスすることを発表していた。
同社グループの多角化事業売上の約半分を占める化工品事業は、従来から事業環境と社会ニーズの変化に応じて新規参入・撤退を繰り返してきた。その一つであるコンベヤベルト事業については、同社グループが持つコア・コンピタンスを活かせる事業であるか、事業の経済性やブランド貢献など同社グループ内のシナジーの観点も含めて、総合的な検討を重ねてきた。
しかし、将来的に経済性を維持しつつ、優位性ある社会価値・顧客価値を提供し続けることはできないと判断し、撤退することを決定した。撤退時期については、取引先への影響を最小限に抑えるため、段階的な生産・販売縮小を経て、2024年末の完全撤退を予定している。
④バイオマス製品・技術の開発が相次ぐ
三菱ケミカルは6月7日、植物由来原料を使用したPTMG(ポリテトラメチレンエーテルグリコール、「BioPTMG」)を開発。フタムラ化学は6月29日、植物油廃棄物などの再生可能資源を用いたマスバランス方式によるバイオマスプラスチックを使用した食品包装フィルムを展開するため、バイオマスの認証制度として欧州で広く採用されている国際持続可能性カーボン認証取得に向けて準備を進めていると発表した。イノアックコーポレーションは7月14日、植物由来原料50%以上を配合した国産バイオマスウレタンフォーム「エコロセル」の開発に成功したと発表した。
東レは7月27日、同社が環境負荷物質不使用かつ植物由来成分を原料とした新規接着剤を開発し、東レ・デュポンおよび東レハイブリッドコードがその接着技術を確立したと発表。 三菱ケミカルは9月17日、リサイクル性に優れた耐熱二軸延伸ポリスチレンシートを開発、量産体制を整えたと発表した。
帝人フロンティアはタイでペットボトル粉砕原料を使用したポリエステルリサイクルチップの生産を開始する。
ランクセスは10月20日、連続繊維強化熱可塑性プラスチック複合素材「テペックス」シリーズで天然資源のみで作った新製品を開発したことを発表した。
⑤主要ゴム企業の業績が大幅回復
新型コロナウイルス影響を背景に、主要需要先の自動車メーカーでは工場の稼働を一時休止、経済活動がストップした影響で、昨年の上場ゴム企業の業績も悪化していたが、落ち込んだ業績が軒並み急回復した。
一方、主要上場ゴム関連企業の22年3月期第2四半期連結決算はコロナからの需要回復による販売増、主原料価格上昇に伴う販売単価上昇などが寄与し、ゴム上場企業の多くが増収となった。22社合計の売上高は1兆6373億7800万円で前年同期比18・7%増となった。単純な比較はできないが、20年3月期第2四半期の22社合計売上高1兆7557億7500万円と比べると、ゴム上場企業の売上高はほぼコロナ前の水準に戻りつつある。
22社合計の営業利益は1025億1600万円(前年同期は60億8600万円)で同1584・5%増となった。前年同期はコロナ影響で売上高が大きく落ち込み、大幅な営業減益となった企業や営業損失となった企業が相次いだ。しかし、今年度上期は売上高の増加に加え、各企業が進めた生産合理化、原価低減、販管費や固定費など経費削減効果なども奏功し、22社中18社が営業増益となった。
⑥ゴム上場企業の設備投資4年ぶり減少
本紙がまとめた主要ゴム関連企業の2020年度の設備投資実績によると、26社合計の投資額は5734億7400万円で、前年度比16・3%減となった。コロナ禍でタイヤ4社を始め、自動車用ゴム部品、工業用ゴム部品各社も投資抑制に動いたことから、全体の投資額は4年ぶりに減少した。
業種別では、タイヤ4社は合計3691億9000万円で同16・3%減となった。20年度は前年度の7・1%増からマイナスに転じたが、4社は省人化や海外工場の能力増強、基礎研究技術強化に向けた投資を行うなど、コロナ禍でも将来の成長に必要な投資を継続した。最も投資額が多かったのはブリヂストンの2719億円で同6・0%減。
ベルト3社は合計で107億6000万円で同26・0%減となり、前年度の同31・0%増から大幅なマイナスとなった。自動車部品5社の合計は1052億4500万円で同20・9%減。
工業用品その他12社の合計は149億6500万円で同29・6%減。合成ゴム2社の合計は733億1400万円で同2・2%増となった。
⑦ゴム製品出荷が2割近い伸びに
日本ゴム工業会が経済産業省統計を基にまとめた1~6月のゴム製品生産統計によると、出荷金額は前年同期比18・2%増の1兆800億8000万円となった。自動車タイヤを始め、工業用ゴム製品、ベルトやホースなども2桁の伸びとなるなどゴム製品の出荷金額は回復している。 コロナ感染再拡大が懸念材料として残るものの、ゴム産業の主要需要先の自動車生産は昨年後半から回復基調で推移している。これを受けて、21年上半期のゴム製品出荷は2割近い増加となった。ただ、コロナ発生前の19年上半期(1~6月)の出荷金額1兆1549億8900万円には若干届かなかった。
また、日本ゴム工業会が財務省貿易統計に基づいてまとめたゴム製品の輸出入実績によると、1~6月の輸入金額は合計で2840億3500万円で前年同期比36・8%増となり、コロナ禍から経済活動が徐々に正常化に向っており、輸入金額も大きく回復した。
⑧タイヤ各社が海外で生産能力増強
ブリヂストンは7月1日、ブリヂストンドブラジルインドゥストリア イ コメルシオ・リミターダ(BSBR)がブラジル・バイーア州で運営する乗用車用タイヤ及び小型トラック用タイヤ工場の生産能力を増強することを発表した。総投資額は約7億ブラジルレアル(約154億円※1ブラジルレアル22 円で換算)となっており、2021年第4四半期に着工し、生産能力を現在の年間約350万本から段階的に増強し、2024年中に年間約430万本にする予定としている。
横浜ゴムは8月11日、農業機械用タイヤなどオフハイウェイタイヤ(OHT)の生産販売子会社であるヨコハマ・オフハイウェイタイヤ=YOHTの生産能力の増強を図ると発表した。インドに建設中のヴィシャカパトナム工場で追加増産投資を実施する。追加投資額は1億7100万米ドル。同工場の生産能力は当初予定していた日量55トン(第1期/ゴム量)に、今回(第2期)増強分を加えて日量123トン(ゴム量)となる。
住友ゴム工業は7月26日、ブラジル工場のタイヤ生産能力を増強すると発表した。総投資額は10億6400万レアル(約235億円)。ブラジル工場における乗用車・ライトトラック用タイヤの生産能力を現在の日産1万8000本から2024年4月に日産2万3000本に、トラック・バス用タイヤの生産能力を現在の日産1000本から2025年4月に日産2200本に増強する。
TOYOTIREは、22年よりセルビア工場でタイヤ生産を稼働させる予定。
⑨タイヤ4社が全社大幅な増収増益に
タイヤ4社の21年12月期第3四半期連結決算が出そろった。 自動車生産の急回復に伴い、タイヤの販売量も前年同期を大幅に上回り、各社の売上高は前年同期で大幅な増加となった。利益についても販売量の増加や価格MIX、為替差なども後押しして大幅に前年同期を上回った。
ブリヂストンは売上収益が2兆4017億5800万円で前期比19・8%増、調整後営業利益は2779億2200万円で同168・0%増、営業利益は2657億7100万円(前年同期は225億4700万円)、四半期利益は1929億400万円(前年同期は400億2600万円の損失)となった。
住友ゴム工業は売上収益は6570億1900万円で前年同期比21・6%増、事業利益は320億7100万円で同306・2%増、営業利益は298億6100万円で同358・7%増、四半期利益は207億2600万円(前年同期は67億9300万円の損失)となった。
横浜ゴムは売上収益が4604億5500万円で前年同期比22・3%増、事業利益は371億2100万円で同316・5%増、営業利益は593億2600万円で同期比600・9%増、四半期利益は434億7900万円で同904・2%増となった。利益はいずれも過去最高となり、売上収益は第3四半期(7~9月)はコロナ拡大前の2019年を上回り、過去最高を達成した。
TOYO TIREは売上高は2828億800万円で前年同期比14・6%増、営業利益は396億6300万円で同79・9%増、経常利益は 417億8100万円で同141・9%増、四半期純利益は288億6600万円で同188・9%増となった。
⑩日本ゴム工業会が創立70周年を祝う
日本ゴム工業会(池田育嗣会長)は6月25日、経団連会館の経団連ホールで創立70周年記念式典を開催し、会員企業やゴム関連団体から70人(リモートによる出席23人を含む)が出席し、創立70周年を祝った。池田会長は「当会が創設された1950年以降、当会もオイルショックやリーマンショックなど幾多の苦難があり、決して平たんな道のりではなかった。しかし、その時代の先輩方やここにご参集された皆様の知恵や勇気、行動力により多くの苦難を乗り越え成長することができた」と語り、「70周年を迎えた2020年は世界が新型コロナウイルスのパンデミックに見舞われ、戦後最大と言われる経済危機に直面した。しかしながら、ゴム産業はこれまでも幾多の困難を乗り越えてきた。今回の危機も乗り越えることができると思う」と話した。