【新年インタビュー】日本ゴム工業会 池田育嗣会長

2022年01月03日

ゴムタイムス社

■ 新年インタビュー

コロナ前を上回る年に

日本ゴム工業会 池田育嗣会長

 

 「2022年のゴム生産はコロナ前の水準を上回りたい」と語る日本ゴム工業会の池田育嗣会長。21年を振り返ってもらいつつ、カーボンニュートラルへの対応やISO/TC45国内審議委員会の活動、22年の抱負などについて池田会長に聞いた。

 ◆21年を振り返って。

 ゴム製品の出荷を見ると、21年1~9月は前年同期比116%で推移している。品目別ではタイヤを始め、ホース、ベルト、工業用品ともに前年同期を大幅に上回っている。ただ、コロナ前の19年の水準には戻ってはいない。19年と比較するとベルトは104%だが、タイヤは92%、ホースは96%、工業用品は96%、全体では93%の水準にある。足元の21年10~12月も、半導体不足に加え、コロナ感染再拡大でアセアン地域の自動車メーカーの生産が一時停止に追い込まれた。21年は19年レベルに戻るのは難しいだろう。

 ◆原材料価格高騰について。

 原油価格の推移をみると、コロナ影響で各国の経済活動がストップした20年4月には、1バレル20ドル台に落ち込んだ。その後、各国の経済活動が徐々に再開するようになると、原油価格もどんどん上昇し、一時1バレル80ドル台まで上昇した。

 原油価格の上昇を受け、ブタジエンやナフサの価格も上昇している。それにつれて合成ゴム価格も上昇し、合成ゴム価格は3年ぶりの高値となっている。また、天然ゴム価格は天然ゴム産地の天候不順やコロナ感染拡大による産地の労働者不足の影響から、21年1月に1キロ300円に上昇した。その後は自動車減産などもあって、現在の価格は1キロ200~250円の水準で落ち着いている。ただ、合成ゴム、天然ゴム価格とも依然より高値にあるのは間違いない。その中で、原材料価格の高騰分を製品価格に転嫁できていない会員も多い。原材料価格の高騰はゴム産業にとって大きな課題となっている。

 ◆会員企業を取り巻く環境は。

 日本ゴム工業会が21年7月に実施した中小企業会員へのアンケート調査によると、コロナの影響によって売上の減少や生産調整、コロナ感染対策による生産性低下や費用なども発生し、多くの会員が苦労されていることがわかった。

 一方、直近のアンケート調査(10月実施)によると、CO2センサーを導入して換気状態の見える化、従業員と来訪者のスペースを分離するなど、コロナ感染対策を実施した。こうした良い話は20年にはなかった。会員企業のコロナ対策は確実に進んだ年であったと思う。

 ◆カーボンニュートラルへの対応は。

 日本ゴム工業会では、「カーボンニュートラル行動計画(旧低炭素社会実行計画)」フォローアップ調査を毎年実施している。20年度のCO2排出原単位を2005年度比で15%削減する目標を掲げており、その目標に対して19年度は1年前倒しで達成した。20年度は新ゴム量が大幅に減少し目標は未達となったが、固定エネルギー分を考慮すると、CO2排出原単位は19年度と同水準を維持している。

 ただ、カーボンニュートラルは次元が大きく異なる話しだ。省エネやCO2排出量削減など従来の活動を続けても、政府が掲げる2050年のカーボンニュートラルは達成できない。日本ゴム工業会のカーボンニュートラルに向けた取り組みは、現在検討中であり22年には2030年の目標数値や2050年に向けた長期ビジョンを発表する予定でいる。

 ◆外国人技能実習生受入れについて。

 外国人技能実習生受け入れに関しては、ゴム製品製造職種において、混練り圧延加工作業、押出し加工作業、成形加工作業、複合積層加工作業の4作業が21年3月に厚生労働省より追加され、当会が試験実施機関として認定された。その後の活動として、21年11月までに試験実施に必要となる試験監督者講習会の実施、及び、混練り圧延加工作業の技能実習のみに必要となる指導員登録認定の開催等を行い、21年12月から試験をスタートしており、既に2社で申請を受け試験を行っている。ただ、2社以外にも外国人技能実習生の受け入れに前向きな企業は多い。コロナ感染が収まり、外国人の入国制限が緩和されれば、外国人技能実習生を受け入れる企業は増えるだろう。

 ◆日本の優れたゴム技術をアピールするために必要なことは。

 本来であれば21年は日本でISO/TC45(ゴムおよびゴム製品の技術委員会)の国際会議を開催する予定だったが、コロナ禍で中止となった。今後2024年の開催を提案し、

 

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