東レは12月16日、下廃水処理の汚泥脱水プロセスで発生するストルバイト析出によるスケール発生を低投与で抑え、運転コストを大幅に削減する水処理薬品RWI―8000をグローバルに販売開始すると発表した。
同製品は、同社のスイス(欧州)子会社であるToray Membrane Europe(略称「TMEU」)が開発し、4月から一部の欧州顧客向けに先行販売している。運転コスト削減や品質安定に繋がると顧客から評価を得たことから、今回グローバルに販売を拡大することとした。
ストルバイトは、下廃水処理の脱水工程において、脱水用遠心分離機の表面や配管内部にスケールとして付着する。μm程度の厚みであれば機械的に強い力を加えて除去できるが、急速に付着が進行する性質があり、mm単位の厚みになると除去は困難で、配管や遠心分離機の洗浄が必要となる。また、付着が酷いと配管の解体・交換が必要となる場合もあり、高額な交換費用がかかるほか、特に配管が建物内部に設置されている場合は、長期間の運転停止を余儀なくされる問題があった。
ストルバイト析出発生は、マグネシウムの結晶化が主な原因となる。TMEUは、30年以上にわたる水処理向けスケール防止剤の開発・製造で得た、マグネシウムに挙動の近いカルシウムスケール抑制の技術的知見から、下廃水処理に適したスケール防止剤RWI―8000を開発した。
下水を脱水した際に分離された汚泥サンプルを用いたテストでは、汚泥1㎥辺りに数滴のRWI―8000を投与した結果、形成されていたストルバイト粒子の数が投与直後に99・4%減少することを確認した。また、稼働中の下廃水処理施設でRWI―8000を毎日25~50ppm投与した結果、ストルバイト析出の防止により洗浄コストを従来比75%削減でき、安定運転や稼働率の向上に繋がることを実証した。
水処理用スケール防止剤の世界市場規模は3億3000万USDと推定され、年間5~7%で成長している。同社は、多様な原水処理で使用するスケール防止剤をラインアップしており、同製品の開発から得られた知見を他用途にも応用することでさらなる事業拡大を目指す。