2022年の新春を迎え、謹んで新年のお喜びを申し上げますとともに、年頭にあたりご挨拶申し上げます。
初めに、昨年を振り返りますと、一昨年初からの新型コロナウイルス感染症の世界的な流行で引き続き混迷を深めた一年でありましたが、我が国におきましては年央からのワクチン接種率の高まりや、国民一人一人の衛生意識の浸透により、感染者数も減少傾向にあり、10月1日には「緊急事態宣言」も解除され、各種制約により停滞しておりました経済・社会活動においても回復の兆しが見えてまいりました。
一方、足元では新たなオミクロン株の動向が気になるとともに、感染流行第6波の再来が懸念されることから、3回目のワクチン接種の早期の普及や医療体制の一層の充実が期待されるところでもあります。新たな年を迎えるに当たり、感染流行の歯止めと経済の好循環が相反することなく図られることを強く願うものであります。
また昨年は一年延期となりました東京オリンピック・パラリンピックも、大会関係者皆様のご尽力で無事開催することが出来ました。各種競技での我が国選手の活躍は
日本国民の一人として大変喜ばしく思っております。
私共、石油化学産業に携わる者にとりまして重要なテーマのひとつに地球温暖化対策があります。日本政府は2050年カーボンニュートラル実現を目標に掲げ、グリーン成長戦略の策定、経済成長に資するカーボンプライシングの検討などの政策を進めております。カーボンニュートラルに向けた個々の対応は会員各社の取り組みによるところが大でありますが、石油化学工業協会といたしましても地球温暖化問題解決に向けて積極的に貢献する基本姿勢に立ち、課題の把握、共有化あるいは他団体との連携といった必要な取り組みに努めて行きたいと考えております。
また、トータルとしての環境負荷低減に向けてはGHG(温室効果ガス)問題以外にも、プラスチック廃棄問題も含めての客観的な判断指標LCAの普及も重要であると考えます。
さて、今般の世界経済を見ますと、新型コロナウイルス感染症の収束については予断を許さない状況にあることに加え、半導体不足などの原材料の供給制約や原油価格の乱高下、米中関係の一層の緊張等、国際情勢は多くの不確実要因を抱えております。
我が国としては、引き続き環境の変化に迅速かつ機敏に対応することが求められる年であり、新型コロナウイルス禍以降も見据えて、石油化学業界としても正面から内外の課題に引き続き取り組んで行くことが重要と考えております。
一方、国内の石油化学業界の状況を見ますと、エチレン設備の実質稼働率は、2020年6月以降、2021 年11月迄18カ月連続90%超えの高稼働を維持しております。協会長と致しまして、まず何よりも工場の24 時間操業、製品の安定供給にご尽力下さり、高稼働を支えた、製造現場の皆様の並々ならぬご努力に感謝を申し上げたいと存じます。
コロナ禍により石油化学産業が人々の生活に必要不可欠なエッセンシャル産業と認識して頂いておりますが、このような高稼働が継続しているときこそ安定供給責任を果たすため、石油化学業界としては、これまでにも増してさらなる保安・安全の確保に努めてまいります。
このような状況下において、当協会としては我が国の石油化学産業の持続的発展に向け、以下の諸課題に積極的に取り組んでまいる所存です。
1.保安・安全の確保・向上
(1) 保安に関する経営層の強い関与
本年はトップの保安に関する懇談会等の内容をベースに「安全メッセージビデオ」の更新版制作に引き続き取り組みます。
(2) 学習伝承
若手の現場管理者の気付きの機会とするため、保安推進会議、コンビナート地区での事故事例巡回セミナー等を開催します。また、同推進会議の場を利用して会長として優秀な安全成績をあげた者へ保安表彰を行い動機付けの機会と致します。
さらに、「産業安全塾」についても、引き続き充実させ、人材育成にも努めてまいります。
(3) 国、学会等との連携
官民一体となったスマート保安促進や規制・制度の見直しに向けた取組に関して国の会議や関係機関における検討に参画します。
2.事業環境の基盤整備
我が国の石油化学産業の持続的発展を目的に事業環境の基盤整備に取り組んでまいります。
(1)定修会議
定修日程の調整を円滑に進めるため、「定期修理研究会報告書」に示されたガイドラインに基づき、直接の利害関係が無い工事・検査や顧客業界の「事業者団体事務局」および「学識経験者」から構成される「定修会議」を開催し、対応を進めてまいります。
(2) 規制改革
事業活動全般の視点から幅広く要望を吸い上げ、石油化学産業の規制改革要望として政府へ提出し、その実現に努めます。
(3)税制改正
法人実効税率の引き下げ、投資促進策の拡充等について、国際的イコールフッティングの実現、実質的な負担の軽減、及び競争力強化のための基盤整備を目指し、経済産業省(以下「経産省」)や一般社団法人日本経済団体連合会等の関係団体と連携し要望の実現性を高めるよう努めます。また、石化原料用ナフサ等に係る揮発油税の免税措置及び石油石炭税の免税・還付措置についても、引き続き経産省と連携して本則非課税化の実現に向けて慎重に対応してまいります。
(4)人材確保・育成
人材確保の活動として機電系エンジニアの採用支援のための大学での共同キャリアセミナーを、会員各社の協力を得つつ、実施してまいります。
さらに「学校壁新聞」をリニューアルし、高等専門学校、工業高校及びコンビナート所在地域の高校・中学校に配布し、石油化学産業の認知度向上に努めます。
3.グローバル化対応の強化
(1)アジア石油化学工業会議(APIC)
アジアの石油化学産業従事者のコミュニケーションの場であるアジア石油化学工業会議(APIC)は、コロナ禍により2020、2021年と延期されましたが、今後の開催につきましては、加盟7協会とも対面方式の開催に意義があるとの認識で一致しており、当協会もメンバー協会として、その開催に向けて引き続き協力を続けてまいります。
(2) 海外情報研究会の開催
会員企業の知見の向上と情報の共有のため同研究会を開催、タイムリーなトピック/テーマを選定し、外部専門家講師と会員企業講師によるプレゼンテーションを、実施してまいります。
以上、三点に絞って述べさせていただきましたが、ほかにも広報活動としては、石油化学産業の現状と課題について正確な理解を広く周知するために、毎年発行しているデータ集「石油化学工業の現状」について2022年版を作成・配布するほか、石化協ホームページ上で有益な情報の更新アップに努めます。
また、石油化学産業IT利活用の推進に努め、情報セキュリティ対策の強化を支援してまいります。
今後とも当協会への一層のご支援とご協力を賜りますようお願い申し上げます。
最後に、新型コロナウイルス感染拡大の早期の終息と日本経済の着実な回復・発展を願うとともに、関係各位の益々のご活躍とご健勝を祈念し、新年のご挨拶といたします。