日本触媒は1月7日、同社と大阪大学大学院工学研究科応用化学専攻の宇山浩教授のグループが、様々な素材表面に抗菌及び抗ウイルス効果の付与が期待できるコーティング材料を共同開発したと発表した。
同コーティング材料は、「フタロシアニン金属錯体による抗菌抗ウイルス効果、酢酸セルロースによる接着機能を持つ」「ヒトコロナウイルスを99・9%以上不活化」「衛生対策が必要な幅広い用途への利用が期待される」「日本触媒協働研究所にて開発」といった特徴をもつ。
様々な細菌・真菌・ウイルスを不活化することが可能な一重項酸素を発生する光増感剤に着目し、既存の光増感剤を比較評価したところ、一重項酸素放出能及びその安定性の観点で、フタロシアニン金属錯体が最適であることを見出した。さらに同社がこれまで培った赤外線カットフィルター用などの色素の設計技術を駆使してフタロシアニンの構造を最適化することにより、酢酸セルロースへの分散性が高く、かつ長期間にわたり一重項酸素を生成可能なフタロシアニン金属錯体を新たに開発した。
酢酸セルロースは、植物由来のセルロースを酢酸で修飾したポリマーであり、当該ポリマー溶液を塗工し、乾燥することでガラスやPTFE(ポリテトラフルオロエチレン、フッ素樹脂)などの種々の素材表面に酢酸セルロース層を形成することが可能となる。同開発品をコーティングしたPMMA(アクリル樹脂)板のヒトコロナウイルスへの抗ウイルス性能をISO21702に規定する試験方法で評価したところ、ヒトコロナウイルスの99・9%以上が不活化されたことを確認した。
以上のことから、同開発品は抗菌及び抗ウイルス効果を有するコーティング材料として、衛生対策が必要な用途に対して、幅広い利用が期待できる。
同社は今後も、日本触媒協働研究所において、大阪大学大学院工学研究科の最先端の学術的な知見や情報技術基盤と日本触媒の触媒、有機合成、高分子合成などの保有技術の融合を図り、さらにデータサイエンスを活用することで、革新技術の創出、事業創出、そして研究人材の育成を推進していくとしている。