クラレは、同社が世界で初めて工業化した原料モノマー(ノナンジアミン)を使用した耐熱性ポリアミド(PA9T)「ジェネスタ」を展開している。ジェネスタは、耐熱性PAの中では最高レベルの低吸水性(寸法安定性)、高強度、耐高電圧特性(耐トラッキング性)、耐摩耗性をバランスよく両立するスーパーエンプラ。これら特性を強みに、電気・電子分野や自動車分野などで採用が広がっており、「21年の販売数量は19年比で5割伸長した」(同社)。
電気・電子分野では、巣ごもり需要の高まりに伴って、タブレットPCやゲーム機部品での販売が好調。また、データ通信量が急激に増大するなか、5G通信局向けで使われる次世代メモリ(DDR5)のコネクタ用途においてもジェネスタの高耐熱性に加え、寸法安定性や強度などのバランスの良さが評価され、採用が増えている。
自動車分野も好調だ。軽量化、電子制御化、EV化が進む自動車業界のトレンドに対し、同社はジェネスタの採用に向けた提案活動に力を入れている。摺動部品では、高い強度を生かしエアコン周りのギアを代表例として汎用エンプラ製のギアを6割ほど小型化でき、燃費も向上する(同社)と語る。また、CASEの進展で機能デバイス(車載電装部品)搭載量増加に伴い、車載電装部品のSMT(表面実装)化が急速に普及し、ジェネスタの耐熱性と低吸水性(SMT対応)、寸法安定性、強度等が車載コネクタメーカーに高く評価され、採用が拡大している。
クラレの中期経営計画「PASSION2026(22年~26年)」において、ジェネスタ事業は年平均成長率10%を目指す。注力分野の自動車分野では、車載電装部品に加え、EV(電気自動車)で求められる絶縁対応した各種高電圧部品や、熱マネジメントに必要な冷却配管での採用を進める。電気・電子分野ではDDR5での採用を深めていく。さらに新規分野では、産業機器部品、水栓/石油パイプ、フィルムなどの部品で採用拡大を目指していく。
同社ではジェネスタのグローバル展開を加速させるべく、世界10ヵ国、13拠点に販売・技術サービス担当者を配置。販売面では、DX(デジタルトランスフォーメーション)を活用したマーケティングに力を入れており、「全社に先駆けてDXを活用したマーケティングを積極的に取り組んでいるのがジェネスタだ」(同社)と話す。供給面では日本の鹿島事業所(9,000t/年)・西条事業所(4,000t/年)に加え、タイでの新拠点(13,000t/年)が今年中に立ち上がる予定。「タイの新拠点は原料となるブタジエンの安定調達に加え、供給面でのBCP対応においても非常な有効な拠点になる」(同社)と考えている。
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