宇部興産は3月28日、同社とHiLungが、同社の保有するリゾホスファチジン酸受容体1(LPA1)選択的アンタゴニスト(開発コード・HL001)に関する共同開発契約を締結したと発表した。
同化合物は、特発性肺線維症(IPF)の病態形成メカニズムとの強い関連があると考えられているLPA1の選択的アンタゴニスト。IPFは指定難病である特発性間質性肺炎(IIPs)の一病型で、一般に慢性進行性で肺の線維化と肺活量の低下を来し、平均的には診断後5年程度で半数の患者が死に至るとされ、肺機能を回復させる治療法が肺移植しかないアンメットニーズの高い疾患として知られる。IPFの明確な原因は不明だが、近年の基礎研究から、肺胞における修復再生機構の異常が誘因となって線維化が惹起されるメカニズムが有力視されており、こうした異常をもたらす因子として注目されているLPA1の経路を阻害することで、同化合物は薬効を発揮することが期待される。
両社は2021年3月に共同研究契約を締結し、HiLungが有するヒトiPS細胞由来呼吸器細胞を用いた革新的な肺線維化モデルを用いて同化合物の有効性やメカニズムの評価等を行ってきた。非臨床の探索的な評価試験から、同化合物は、このアンメットニーズが高いIPFの治療に大きく寄与できると考え、今回共同開発契約を締結した。なお、同化合物は2023年度中の臨床試験開始を目指している。
今回の契約締結により、両社はより一層強い協力体制を築き、それぞれの強みを活かして同化合物の開発を加速していくとしている。