東レは3月30日、エンジニアリングプラスチックを飛躍的に高靭性化させる革新材料の工業化に成功し、「スピノーダル分解によるPBT/PC共連続型高性能ナノ―アロイの開発と工業化」として、日本化学会より「第70回化学技術賞」を受賞したと発表した。
今回の受賞は、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート(PC)の組み合わせにおいてアロイ構造をナノオーダーに精密制御することで飛躍的な高靭性化を実現させ、自動車衝突時の様な大きなエネルギーを吸収可能な技術として安全な自動車社会実現に寄与する高い将来性と社会的意義を有している点が評価された。
同社は、PBT/PCの組み合わせを例に独自のナノテクノロジーであるナノアロイを駆使し、スピノーダル分解による両成分がナノオーダーで連続した共連続型のナノアロイ構造への精密制御を世界で初めて可能にした。これにより、従来のアロイ材料では破損するような大きなエネルギー(時速36kmでの衝突相当)を加えても、エネルギーを吸収可能となることを実証し、この特性により搭乗者の安全性を高める衝撃吸収部品として広く採用が進んでいる。さらにナノアロイの優れた高靭性化発現機構を明らかにし、ナノアロイ技術体系を構築するとともに、その適用範囲をポリアミド、ポリフェニレンスルフィドにも拡大している。これにより、スポーツ用途では高速変形時の柔軟性を活かしたテニスガット、パソコン筐体用途では落下時の精密電子機器の保護材料等に適用範囲を大きく拡大している。今後は、EV化の重要部品である電池を保護する衝撃吸収部品等への展開を目指している。
同社はこれからも、「わたしたちは新しい価値の創造を通じて社会に貢献します」との企業理念のもと、コア技術である有機合成化学、高分子化学、バイオテクノロジー、ナノテクノロジーなどのさらなる深化を図り、革新的な先端材料の創出を進めていくとしている。