積水化学工業は3月31日、同社の高機能プラスチックスカンパニーが、独自の高難燃樹脂(塩素化塩ビ)と繊維強化複合技術の活用により、高容量リチウムイオン電池の激烈な発火に対応した「難燃軽量シート」を開発したと発表した。同社は今後、パートナーと共に試験販売に向けて開発を加速していく。
同製品は、同社独自の高難燃樹脂(塩素化塩ビ)をガラスマットに含浸させ、樹脂繊維複合材料とした。これまで塩ビ系樹脂は溶融状態でも粘度が高く繊維へ含浸することが難しいため、高比率な繊維含有の複合材を作ることができなかったが、同社は独自の樹脂複合技術を駆使し、高比率繊維含有での複合化を可能にした。熱可塑性樹脂なので、熱プレスでの賦形やリサイクルが可能となる。
また、特殊な3層構造とすることで、電池パックカバー材としての強度を持たせながら、高い遮炎性(耐無機物攻撃、難燃)と断熱性を両立し、アルミ(1mm)+無機鉱物シート(1mm)に対して約3割の軽量性を実現した。
同製品の効果についての確認として、トーチバーナーの炎を当て、裏面温度と表面状態を観察した。2分後の裏面温度は≦300℃、7分後の表面状態は変形もなく穿孔もなかった。
次に車両への搭載を想定し、高容量セル(NMC811/90Ah)を熱暴走させ、アルミと比較した。蓋部分をアルミと開発品とで作成した電池パック模型の内部にセルをセットし、熱暴走させた。アルミはセル発火後2秒で火炎抜けしたが、同社開発品は火炎抜けもなく、高い遮炎性を確認できた。
同社は現在、主に自動車向けの開発を進めているが、将来的には住宅定置用電池、航空機や太陽光発電所などの高容量リチウムイオン電池システムの筐体用途などへ展開を図っていきたいとしている。