デンカは4月28日、同社米国子会社のデンカ・パフォーマンス・エラストマー社(DPE)は、2021年7月15日にアメリカ環境保護庁(EPA)に対し、クロロプレンモノマーの発がんリスクに関する毒性評価の「見直し要請(Request for Correction/RfC)」を提出したと発表した。
しかしながらEPAは、EPAが2010年に作成した統合リスク情報システム(IRIS)の発がんリスク評価およびその補足資料に記載された結論は、EPAの情報品質ガイドライン(2002年、米国で作成)と一貫性があるという理由により、科学情報のアップデートがあったとしても直ちに毒性評価値を見直
すものではないとし、2022年3月14日にRfCの却下を公表した。
今回EPAにより却下されたRfCが示す毒性評価モデルは、生理学的薬物速度論(PBPK)モデルと呼ばれ、人体への健康リスク評価に関するEPAおよび米国科学アカデミーの推奨事項に則っている。同PBPKモデルは、EPAが2010年におこなった発がんリスクに関する毒性評価で用いられた手法よりも科学的に正しい手法を通じて人体への健康リスクを算定するものであり、その評価結果に関する論文が主要な科学雑誌「Inhalation Toxicology」に掲載された。EPAは2010年のIRIS毒性評価をもとに、70年間の平均暴露濃度0・2μg/㎥以下を推奨しているが、このRfCが示す毒性評価モデルでは、EPA推奨値が本来よりも130倍過剰に評価されたものと結論付けている。
DPEは対応策を早急に決定するために、科学チームと今回のEPA判断を精査の上、「再考要請(Request for Reconsideration/RfR)」の提出を検討している。また同社は、同件によるDPEの事業および生産活動に対する影響はないとしている。