日化協技術賞技術特別賞受賞 クラレの「ピューリア」GL

2022年05月25日

ゴムタイムス社

 クラレは5月23日、排水の効率的な再利用を可能にする水処理用中空糸膜モジュール「ピューリア」GLの開発と工業化において、「第54回日化協技術賞」の技術特別賞を受賞したと発表した。

 日本化学工業協会が主催する「日化協技術賞」は、優れた化学技術の開発や工業化によって化学産業ならびに経済社会の発展に寄与した事業者を表彰するもので、同社はこれまで、人工皮革「クラリーノ」の工業化(1973年・第6回)で技術賞、放射線検出用素材「PSF(プラスチックシンチレーションファイバー)」の開発と工業化(2019年・第52回)で技術特別賞を受賞している。

 「ピューリア」GLは、排水の効率的な再利用を可能にする高透水性・高濁度対応膜モジュールで、同社の既存製品と比べ、透水性能(水の透過しやすさ)が約5倍、濁度耐性(汚れに対する耐性)が約10倍向上している。排水は、従来、膜ろ過設備の前に前処理設備が必要だったが、同製品を用いることで前処理設備が不要になり、省プロセスで効率的な水の再利用を可能にする。

 高透水性は、同社が独自開発した新たな多孔質中空糸膜の製造技術である「NIPS―TIPS併用法」によって実現した。また高濁度耐性は、中空糸膜1本1本が自由に動く「片端フリー構造」と、濁度成分の蓄積箇所を集中的に洗浄できる「導水管構造」による、同社独自のモジュール構造により実現した。

 同製品の用途としては、「排水の回収・再利用」「地下水・河川水などの飲料用水・工業用水化」「食品製造・精密洗浄などの工程水の除菌・除濁」「逆浸透膜(RO)の前処理/除濁」「各種研磨材・有価物の回収・濃縮」などが挙げられる。

 近年、水不足への対応を通して持続可能な社会への貢献を目指し、自社で排水の回収・再利用に取り組む企業が増加している。同製品は、電子産業や食品産業における排水の再利用用途を中心に採用され、水資源の有効活用に貢献している。加えて、飲料用水・工業用水化などでも省プロセス化による水処理コストの削減効果が認められ、採用範囲が拡大している。今後は世界の水不足、水質汚染などの社会課題解決に向け、さらなる貢献が期待できる。

 

「ピューリア」GL

「ピューリア」GL

クラレ倉敷事業所内に設置した「ピューリア」GL

クラレ倉敷事業所内に設置した「ピューリア」GL

 

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