ポリプラ・エボニックと東レは5月25日、ポリアミド樹脂(PA)とポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)の接着を可能とする接着材料を新たに共同開発し、内層に東レのPPSトレリナを用い、外層にポリプラ・エボニックの PA12 ダイアミドを用いた冷却配管用多層樹脂チューブ構成を開発したことを発表した。今回開発した樹脂チューブは、従来の多層樹脂チューブに比べて、耐熱性に優れ、130℃付近の高温環境下で使用可能。また、冷却水に対してのイオン溶出が少ないという特性を有する。自動車をはじめ、産業機械も含めた冷却配管全般に向けた展開を目指す。近年、軽量化による燃費向上を目的としてPA単層チューブや内層にポリプロピレン(PP)を使用した多層樹脂チューブが使用されるケースが増えてきた。ところが、これら従来の樹脂チューブは、耐熱性や加水分解などの問題によって、比較的低温の冷却水が流れる配管に採用が限られていた。
PPSは耐熱性・耐加水分解性に優れた材料であり、この材料をチューブ内層に使用することでこうした課題を解決することができる。 しかし、自動車用チューブの外層に広く使用されているPA12を代表とする長鎖PAとPPSは直接接着することができないため、接着材料の開発が求められていた。そこで、ポリプラ・エボニックと東レは共同でPAとPPSの接着を可能とする新規接着材料の開発に取り組み、ポリプラ・エボニックおよび東レのポリマー技術と、東レのポリマーアロイ技術を融合させることで、PAとPPSの接着性に優れ、安定した多層チューブ押出成形を可能とする新規接着材料の開発に成功。この接着材料を適用し、内層にPPS、外層にPA12を用いた多層樹脂チューブ構成を実現した。
開発した多層樹脂チューブ構成は、一般的な樹脂チューブ押出装置で成形が可能であり、コルゲート成形も可能なため、強靭な機械特性を損なうことなく様々な形状での生産に対応できる。自動車の冷却配管、特に高温の冷却水が流れる部分の金属配管からの置き換えや、低イオン溶出性を活かした電気自動車や燃料電池自動車向けの冷却配管などへの採用を目指している。また、同社は自動車産業だけでなく産業機械など冷却配管全般への展開が可能だとしている。
ポリプラ・エボニックは、今回新規開発したPPS内層の多層チューブに加え、従来のPA単層チューブやPP内層の多層チューブを市場に展開し、自動車のCO2排出削減に貢献するとともに、サステナブルな社会の実現を目指し引き続きお客様へのきめ細かな技術サポートを行っていくとした。
東レは、PPSメーカーとして世界で唯一モノマー・ポリマー・コンパウンドの一貫生産体制を確立し、世界最大のPPSポリマー生産能力を有している。今回、PPS内層の多層樹脂チューブ用素材を市場に展開することで次世代自動車の発展に寄与するとともに、持続可能なサステナブル社会の実現に貢献していくとしている。