東ソーは6月8日、相原秀典相模中央化学研究所所長および同社の「有機EL用電子輸送材料の開発」について、科学技術振興機構より「第47回(令和4年度)井上春成賞」を受賞したと発表した。
有機ELディスプレイは、1997年に世界に先駆けて量産に成功した「日本発」のデバイスで、高画質、薄型、フレキシブル性に特徴があり、現在、様々な製品に使われている。しかし当初は、液晶ディスプレイに比べて消費電力が大きいという技術課題があり、普及できない時期があった。
有機デバイスの課題は、無機デバイスに比べ電気が流れにくい(電荷移動度が遅い)ところにあった。特に高い電子輸送能力を備えた有機材料がないことが、有機ELディスプレイの消費電力が下がらない原因となっていた。そのため、様々なアクセプター性骨格をもつ電子輸送材料が提案されていたが、同社は「トリアジン骨格」に着目し、高い電子移動度をもつ電子輸送材料を開発した。同材料は現在、スマートフォンを始め様々な用途に採用されている。
相模中央化学研究所は、従来困難であった「トリアジン中間体の非対称合成法」を確立し材料開発の幅を広げた。一方、同社は有機EL用電子輸送材料の量産法を確立し、製品化を実現した。
井上春成賞は、大学等や研究機関などの独創的な研究成果をもとにして企業が開発し企業化した、我が国の優れた技術について研究者及び企業に対して贈られる賞となっている。同社および相模中央化学研究所では今回の井上春成賞の受賞を励みとし、今後も有機系電子材料の研究開発を進めていくとしている。